現場の声に耳澄ます
私はこれまで、東日本大震災、西日本豪雨災害、能登半島地震などで、災害廃棄物処理実行計画の策定や建物解体・災害廃棄物処理の監理業務に携わってきました。建設コンサルタントとして、発災直後は県庁所在地に入り、刻々と集まる被害情報を整理し、初動段階の計画素案を立ち上げます。続いて現地に入り、搬出ルートや仮置場候補、分別・積み替えの段取りを一つずつ確かめ、生活再建の基盤づくりを急ぎます。被災地への立ち入りは多くの場合で数週間後となり、初動は車中泊が基本です。夜の静けさや冷え込み、途切れないパトカーや救急車の音に、現場の厳しさを何度も見てきました。自治体職員の方々は、ご自身も被災されながら、仮設トイレの設置、避難所運営、罹災(りさい)証明の発行など、平時にはない業務を同時並行で担われます。私たちは外部支援者として専門性を提供しますが、地域の事情や土地勘には限界があります。地図にない“道”や海と山の“癖”、地域固有の判断基準を教わりながら前へ進めてきました。ここで痛感するのは、自治体職員の方々との密な「意見交換」の重要性です。単に技術的な正解を急ぐのではなく、対話を通じて現場の事情に寄り添い、共に最適解を探るプロセスこそが、災害支援における真の「伴走」であると現場で何度も学びました。
忘れがたい場面は、穏やかな言葉や所作の中にあります。解体前のお宅で思い出の品を見つめるご家族、集積場での「子どもたちの通学路からお願いします」という切実な声、夜明け前の役場で黙々と業務に向かう職員の姿。どの情景にも、その土地の暮らしの時間がにじんでいました。災害廃棄物は単なる“ごみ”ではなく、生活の痕跡であり、心に区切りをつけるための大切な過程だと感じています。現地では、「話を聞いてもらえるだけでも助かる」とおっしゃる方が少なくありません。専門的な答えを急ぐ前に、まず耳を傾けること--その姿勢が、次の一歩を一緒に踏み出す力になると実感しています。
これからの備えとして、南海トラフ巨大地震や首都直下地震は喫緊の課題です。私は、初動72時間の情報統合と計画迅速化、広域処理の標準モデル化、自治体職員を孤立させない広域支援ネットワークなどを、平時から運用手順として具体化したいと考えています。あわせて、復興資材としての災害廃棄物活用を今後の取り組みの柱に据えます。道路整備や河川復旧の早期着手と並行し、再生砕石や再生土などのリサイクル規格を事前に合意し、品質管理・環境基準適合のフローを整備します。これにより運搬距離の短縮、資材逼迫(ひっぱく)の緩和、コスト縮減を図り、復興のスピードを高めます。発災前から住民参加型の周知を進め、循環利用を“例外”ではなく“標準”として機能させる体制を築いてまいります。
災害廃棄物処理は復旧の基盤であり、生活再建の第一歩です。速さと丁寧さの両立、そして現場の声に耳を澄ますことを大切にしながら、私はこれからも現場に向き合い、制度を磨き、人をつなぐ役割を果たしていきたいと思います。15年の歩みを糧に、次の災害への備えを、より速く、より確かに形にしていく所存です。

