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【建設3Dプリンター“標準化”へ始動】東大が社会連携講座/東大・石田哲也教授

最終更新 | 2026/05/25 11:04

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石田哲也教授


 現場打ち、プレキャスト(PCa)に続く“第3の工法”として注目を集める、モルタルを主原料とした建設用3Dプリンター。土木学会が2025年7月に発刊した「建設用3Dプリント埋設型枠を用いたコンクリート構造物の技術指針(案)」を受け、土木をメインとした民間発注者2社とゼネコン大手4社が参画する、業界の“標準化”を目指した取り組みがいよいよ本格化する。東京大学大学院工学系研究科は、2026年度から社会連携講座をスタート。代表を務める石田哲也教授は「日本の基準を世界の基準にする」と力を込める。今後の展望を聞いた。

 石田教授は、「社会連携講座の『講座』とは、いわゆる市民講座のようなものではなく、昔の文部省時代から国立大学に設置されてきた研究室のことだ」と説明し、単なる勉強会ではなく、研究・教育の実体を伴う組織であることを強調する。

講座の研究内容と得られる成果


 講座には、大林組、鹿島、清水建設、大成建設のゼネコン4社に加え、発注者側として首都高速道路会社とJR東日本の2社が参画する。

 さらに石田教授は、「研究室ができるということは、そこに学生がつき、新しい教育が提供されるということ」と語る。特任教授や学生が実際に配属され、研究と教育が一体となって動く“実働する研究室”を目指す。土木のみならず建築専攻の学生も巻き込み、3Dプリンターという新技術を軸にした横断的な学びの場の創出も狙う。

◇性能起点型で共通化

 講座が掲げる最大のテーマが技術の「標準化」だ。ただ、それは全社が同じ材料や機械を使うような画一的なルールづくりではないという。石田教授は、「各社で持っている技術が違い、材料もプリンターも違う。スペックで共通化するのではなく、“性能起点型”で共通化する」と話す。

 各社が時間をかけて蓄積してきた知見を尊重しながら、共通プラットフォームを構築するには、「できたもので勝負する時に、第三者がどうチェックするのかが重要になる」と指摘する。そのため、検査手法や性能評価プロセスの整備が求められる。

 ここで重要な論点になるのが、材料と装置の組み合わせが無数に存在する3Dプリンター技術では、従来型の“仕様発注”がなじみにくいという点だ。何を満たせば「安全」と判断できるのか。その評価基準を明確化することこそが、真の標準化への近道になる。

 この性能ベースの標準化は、マーケットの裾野を広げる「技術の民主化」にもつながる。国内の3Dプリンター業界では現在、地方建設会社やスタートアップ(新興企業)が小規模構造物で普及を進める一方、大手ゼネコンなどは、大規模構造物や都市部の厳しい施工条件に挑んでいる。

 石田教授は、「個社の利益を追求する前に、まずマーケット全体を広げることが重要だ」と語り、業界全体で市場形成を進める段階にあるとの認識を示す。

◇発注者が参画する意義

 3Dプリンター技術の価値を最大化するには、施工だけでなく、設計や発注を含めた上流工程からの変革も欠かせない。

 石田教授は、「設計段階から3Dを取り入れることを考えれば、より合理的な新しい構造物の形もあり得る」と指摘する。従来設計を単純に3Dプリンティングへ置き換えるだけではなく、設計初期から技術特性を織り込むことで、複雑形状による機能向上や劇的な生産性向上が可能になるとの考えを示す。

 こうした未来像を実現する上で重要になるのが、発注者の参画だ。

 首都高速道路会社やJR東日本は、都市部における短時間施工など、現場の切実な課題を抱える当事者でもある。石田教授は、「3Dプリンター技術を前提に発注できるよう、既存の契約制度や会計法の壁を越えた新しい発注方式の確立も必要」と断言する。

◇ビジョン示し投資促す

 さらに社会連携講座には、各企業の経営層や社会に対して将来ビジョンを提示する役割も期待されている。

 技術研究所は往々にして短期利益に縛られ、大規模投資に踏み切りにくい構造がある。こうした現状に対し、石田教授は第三者の立場から、「こんな魅力的な市場がある。足元の議論ばかりしていては、業界の担い手不足は立ちゆかなくなる」と警鐘を鳴らし、中長期視点での投資判断の必要性を訴える。

 「民間企業同士の競争もあるが、社会課題が現実のものになっている今、一気に進むための火をつけたい」と石田教授は語る。その言葉には、日本の建設技術を停滞させないという強い意志がにじむ。

シンポジウム概要(クリックかタップで拡大表示)


 視線は国内市場にとどまらない。欧米や中国で3Dプリンター技術の進化が加速する中、石田教授は、日本の基準を世界の基準にするため、土木学会の指針をベースに、ISO(国際標準化機構)での国際標準化も推進している。

 日本が培ってきた高度な土木技術を、3Dプリンターという新たな器に乗せ、世界標準化を狙う。社会連携講座には、その未来像を実現する中核的役割が期待されている。

◇28日にシンポジウム

 東京大学は28日、社会連携講座「建設用3Dプリンタによるコンクリート構造の革新」の開設に合わせ、本郷キャンパスの伊藤国際学術研究センター(東京都文京区)でシンポジウムを開く。

 横浜国大総合学術高等研究院客員教授の前川宏一氏、国土交通省官房技術調査課官房参事官の信太啓貴氏による基調講演のほか、「3Dプリンタがもたらすインフラの未来と社会実装に向けた課題」と題したパネルディスカッションを予定。参加申し込みを27日まで受け付けている。

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