【記者座談会】国土強靱化基本計画の改定素案/日建連の生産性向上取り組み | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【記者座談会】国土強靱化基本計画の改定素案/日建連の生産性向上取り組み

A 近年、相次いでいる自然災害への国の対応策の検討状況は。
B ことしの災害を踏まえて実施した重要インフラの緊急点検結果が11月27日に報告された。安倍晋三首相は結果を基に防災・減災、国土強靱化のため、3年間集中で対策を実施していくことを明言した。
C 国土強靱化に関して国の指針となる国土強靱化基本計画の改定素案も5日にまとまった。前回の策定以降に発生した災害から得た教訓などを盛り込んだものとなっており、年内に閣議決定される。
A 公共投資への反映は。
D 一部報道では、重要インフラの老朽化対策に3年で3兆円を投じるとされている。微増が続いていた公共投資にとって明るい兆しではないかな。
B とはいえ、裏を返せば財政負担は増加する。国土交通省の最新の試算によると、道路や河川管理施設などインフラの今後30年間の維持管理・更新費合計は最大195兆円程度となっている。2048年度は18年度に比べて年間で1.3兆円も負担が増大することになる。
D 今後はさらにインフラの長寿命化が欠かせない視点になるだろう。国交省の試算では、予防保全に切り替えることで負担は約50%減少する。3年の緊急対策で終わらせるのではなく、維持管理の持続的な投資が必要だ。
C 新たな国土強靱化基本計画には新技術の活用や国土強靱化のイノベーションを進めることが明記される。老朽化対策の効率化を進めるため、使えるものは総動員で取り組まなければならない。

国土強靱化基本計画の改定素案を審議した5日のナショナル・レジリエンス懇談会であいさつする中根一幸内閣府副大臣

土木はPCa、ICT活用で堅調に推移

A 話は変わるけど、国交省が生産性革命「深化の年」と位置付けることしも、残り少なくなってきた。日本建設業連合会の生産性向上推進本部が11月に、16年4月に策定した生産性向上推進要綱のフォローアップ報告書を理事会に報告したが、取り組み状況はどうか。
E 日建連が生産性の指標としている「技術者・技能者1日(8時間)当たりの施工高」の17年度調査結果は、会員企業の土木・建築平均が前年度比2.59ポイント上昇の9万0093円で5年連続上昇し、過去12年間の最高値を更新した。土木も4.39ポイント上昇の8万6442円、建築も1.61ポイント上昇の9万1873円でそれぞれ2年連続、6年連続の上昇となり、堅調に推移していると言えるのではないか。
F 土木の生産性指標は15年度の7万2660円を底に上昇している。日建連は要因の1つとして、人手を多く使う東日本大震災に伴う除染工事の一巡を挙げている。また、プレキャスト(PCa)化の進展や、ICT活用の効果など生産性向上に寄与していると見ている。先月26日の理事会後会見で、日建連の山内隆司会長は、「引き続き官民一体となった取り組みに力を入れていきたい」と力を込めた。また、小原好一生産性向上推進本部長は、ICTの本格的な導入などで「これからが本当の生産性向上になってくる」と述べ、5年後、10年後には建設現場が大きく変わるとの見通しを示した。
E 監督が分厚い図面を持って現場で職人に説明していたころに比べれば、パソコンやタブレット端末の普及で生産性や機動性は格段に向上し、事務作業も大幅に効率化している。生産年齢人口が減少する中、建設現場の生産性向上は避けて通れない。取り組みを加速させるためには、新技術・新工法の導入など発注者の理解促進も欠かせないね。

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