【記者座談会】技能実習制度が廃止の方向/23区で大規模建築計画の延べ床増加 | 建設通信新聞Digital

5月7日 火曜日

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【記者座談会】技能実習制度が廃止の方向/23区で大規模建築計画の延べ床増加

◆人材確保を目的とした新たな外国人制度に

A 政府が10日に開いた第5回「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」で、技能実習制度の廃止を促す大きな方向性が示された。その上で特定技能制度とは別に、人材確保・育成を目的とした新たな制度の創設を検討すべきとしている。

B もともと、技能実習制度は国際貢献の観点から途上国に技術移転することを目的としていた。しかし、運用の実態はそれと乖離(かいり)し、人権侵害が生じているとの指摘がある。米国務省も同制度で労働搾取の人身取引被害が起きているとし、監督・執行措置の強化などを日本政府に勧告していた。国内の生産年齢人口が減少しているため、外国人技能実習生が格好の労働力となっている。こうした実態を考えると、問題が指摘される現行制度を廃止して、人材確保を明確に打ち出した新制度にする必要はあるだろう。

C ただ、政府はこれまで一貫して、一定規模の外国人・家族を期限を設けずに受け入れて国家を維持する移民政策は取らないと主張してきた。今回の人材確保は、見方を変えれば移民政策とも思える。社会分裂などの悪い事態を招くような移民政策としないためにも、きちんとした制度設計が必要だ。

D いまある在留資格を活用して優秀な人材を受け入れる方法もあるかもしれない。特定技能や就労系在留資格の技人国(技術・人文知識・国際業務)だけでなく、現地で優秀な人材を雇用して日本に来てもらう企業内転勤を活用する手もあるだろう。

A とはいえ、円安も相まって母国への入金が目減りし、外国人労働者の日本離れが進んでいるという話も耳にする。人材確保のための外国人に対する給与への配慮とともに、先進諸国より見劣りする日本人の給与をまずは何とかしてほしいね。

施工能力の確保や生産性向上に期待

 

A 日刊建設通信新聞社の調査から、東京23区で2022年度に計画された延べ1万㎡超の大規模建築物の総延べ床面積などの状況が明らかになった。総延べが前年度比42.1%増の350万2820㎡だったのに対し、件数は2件減の71件となった。これを10万㎡超の大型案件に絞り込むと、件数は2件増の6件に増えている。プロジェクトが超大型化の方向へ加速している状況が鮮明になった。

B 本当に東京の建築プロジェクトは、活況を呈しているね。コロナ禍からの回復により、これまで計画されていた案件が活発化しているようだ。特に都心3区を中心に、大型開発のプロジェクトが目立つ。

C 次のピークは26年ともいわれているようだし、何とも景気のいい話だね。しかし一方で、施工能力を懸念する声も聞く。土木と建築はすみ分けができており、施工能力に余力ありといわれる土木は大半が公共工事のため公共事業は問題ないだろう。しかし、建築の大半を占める民間発注工事を請け負う企業は、専門工事業の確保などで厳しい状況にあると思う。

D 大型開発だけでなくデータセンターや半導体工場などの旺盛な需要にも応えなければならない、設備工事業が特に厳しいと言っても過言ではない。新規案件を断らざるを得ない企業もいると聞く。資材価格の高騰や資材入手難に伴う工程遅延などが生じても、立場上、当初契約からの価格・工期の変更が認められないケースが多く、事業継続の危機にもさらされている。

A 時間外労働の上限規制が建設業で強化されるまで1年を切った。施工能力を確保し、生産性を維持・向上させながら法令を守る必要がある。その解決に向けて、発注者の理解と協力、元下一体の行動に期待したい。

開発が進む東京都中央区の八重洲地区。都心では超大型化が加速し、今後も大型プロジェクトが進められる

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