【記者座談会】KYB問題/企業合併・買収 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【記者座談会】KYB問題/企業合併・買収

A KYBとその子会社のカヤバシステムマシナリーが建築基準法に基づく国土交通大臣認定などに適合しない免震・制振ダンパーを出荷していた「KYB問題」が、大手・準大手ゼネコンの悩みの種になっているようだ。
B 現時点で明確にどのくらい業績に影響があるか分からない。とにかく大手・準大手ゼネコンは、施工中物件の対応に追われている。数値が改ざんされていた製品は交換というのが基本だろうけど、単に交換すると言っても作業計画を立てなければならない。顧客要求の水準内に入るよう数値を改ざんしていた制振ダンパーでは、改ざん前の数値をKYB側に要求し、その数値をもとに安全性の検証も必要だろう。大臣認定の数値を改ざんしていた免震ダンパーでも、安全性の検証は必要だ。
C 大手・準大手ゼネコンは、ただでさえ手持ち工事が多くて人員に余裕がない上、台風による休工で工程が遅れ気味だった現場も多いようだ。鉄骨をつなぐ高力ボルトが不足していて鉄骨建て方が遅れ、全体工程が遅れているという話も聞く。その上にKYB問題への対応で、現場にとっては“泣きっ面に蜂”どころの騒ぎではないだろう。
A ディベロッパーがマンションの新規契約を中止しているようだ。
B モデルルームの営業は継続しているという。物件にもよるが、一般的にディベロッパーの営業部隊は早期完売してモデルルームをなるべく早く撤収し、販売経費の軽減を目指す。早期完売物件は中古市場でも評価が高く、販売に苦戦した物件は評価が低くなる傾向がある。その意味では、ディベロッパーにとっても、短期の影響では収まらない可能性がある。いずれにしても、この影響の大きさは積層ゴム問題の比ではないだろう。

ただでさえ人員数と工程が厳しい中で、KYB問題への対応は現場に大きな負担がかかっている(写真と本文は関係ありません)

特殊技術や海外事業基盤狙いM&A

A ところで、最近、M&A(企業の合併・買収)関連のニュースをよく目にする気がする。
C 例えば、8月にはアクティオホールディングスが三信建設工業を、10月にはエーエヌホールディングスが日特建設を子会社化した。もともと、近年、M&Aに積極的な姿勢を示す企業は増えており、大手・準大手ゼネコンも社長の発言でM&Aに積極姿勢を示すケースが増えていた。M&Aを考える企業がまず関心を持つのが、特殊な技術や製品を保有する企業だ。ニッチな市場でもシェアの高い企業を確保できれば、収益が安定する。その意味では、2社の子会社化は合点がいく。ほかにも買収案件は多いが、いずれも同様の観点での買収だろうと予測できる案件が多い。あとは、淺沼組によるシンガポールの建物外壁塗装・修繕工事会社の買収や、コンサルタント会社による現地企業の買収など、海外の事業基盤確立に向けた動きも目立つ。
D 通信建設系の会社は、大手が地方通信建設会社をグループ傘下に収める再編が進み、10月1日で「3グループ+2社」体制になり、2019年1月で「3グループ18社」にまで整理される。
E そうした流れと一線を画すのが、戸田建設による佐藤工業(福島市)の子会社化ではないか。多くの大手・準大手ゼネコンは、地域ごとの事業基盤を確立するために地場企業を買収するという選択肢を頭に入れているだろう。だが、通常は、市場の安定性や買収先企業のガバナンスを考慮して、リスクが大きすぎると考えるはずだ。それを乗り越えてきた意味で今回の事案は興味深いし、今後の各社による動きも注目する必要がある。

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