【記者座談会】2017年3月期決算 ゼネコン8割最高益、設備・空調も好調 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【記者座談会】2017年3月期決算 ゼネコン8割最高益、設備・空調も好調

大手・準大手ゼネコンの8割が最高益を確保するなど好決算に湧いた17年3月期


A 建設産業界の2017年3月期は、好決算に沸いた印象が強い。特に大手・準大手ゼネコンは、8割の企業が利益項目のいずれかで最高益を確保したことも驚きだ。数年前に、この状況を誰が想定できたのかというほど、取り巻く状況は一変したようだね。
B 特に採算指標の完成工事総利益(工事粗利)率が軒並み10%超えというのはトピックだろう。これまでも土木で2桁台というのはあったけど、建築がここまで改善したことはないのではないか。
C 当初見込んでいた建設コストの上昇がそれほどでもなかったことに加え、追加工事が認められたことも利益を押し上げた。何よりも受注時に採算の良い案件を各社が持っていることも大きい。ただ、17年3月期は特例ととらえる見方が強く、少なくともこれによって1-2%の粗利向上に結び付いたと分析する会社も少なくない。
D 次期18年3月期の粗利予想を1-2ポイント引き下げている社が多いのも、一過性だった建設コストの恩恵を差し引いているからという見方ができるね。でもトレンドは変わらず、粗利をプラス予想する社も少なからずある。連動するように最高益をさらに更新する予想としているが、その見方はどうなるか。1年後を興味深くみたいと思うのはわたしだけではないだろう。
E 設備業界も業績は総じて好調だった。きんでん、関電工、九電工の電設大手3社はそろって営業増益を確保した。好調な受注を背景に手持ち工事が豊富で、次期は3社とも増収を見込む。受注高はきんでんが現状維持の予想を立てる一方で、関電工と九電工はさらに積み増す方針。関電工は5000億円の大台に乗せる計画だ。
F 空調大手は6社中3社が増収増益だった。売上総利益率の改善傾向が鮮明になっており、減収となった2社も増益または高水準を維持している。海外比率が突出して高い大気社のみ、海外事業の低迷で苦戦したが、国内空調事業は各社同様に堅調だ。
E 通信設備大手3社は、全社が増収・営業増益となった。当初減少すると予想していた通信キャリアの工事が多く発注されたという、うれしい誤算があった。繰越高は全社が過去最高を記録し、次期もすべてが増収増益を見込む。
G 対照的に道路舗装大手8社は独占禁止法違反による営業停止の影響もあり、全社が減収となった。営業利益もNIPPOを除く7社が前期を下回った。繰越工事高は5社が増やしており、次期は7社が増収を見込んでいる。一方でストレートアスファルトなどの原材料費や労務費の上昇を想定し、営業利益は6社が減少と予想している。
H 素材系のメーカーではセメントの国内販売量が総じて落ち込んだ。好調な輸出が業績をカバーしたものの円高の影響は大きく、期初予想に対する単純達成率は売上高で、住友大阪セメントを除いて未達となった。決算会見でセメント各社のトップは、17年度の大型補正予算執行への期待をにじませたのが印象的だった。業界関係者の間では18年度が五輪関連のセメント需要におけるピークだとみられている。中長期的にはリニア中央新幹線の需要も見込まれる。
A “特需”はあるものの、昨今の建築着工単価の上昇による着工床面積の減少、RC造からS造への工法の変化など根本的な変化はやむを得ず、セメント需要が想定以上に伸び悩む中で、各社がいかに利益を出せるかが課題になる。好決算の元請けとは対照的に、メーカーの方は苦労がかいま見えるね。

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