【記者座談会】緊急事態宣言全面解除/デジタルニューディール | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

公式ブログ

【記者座談会】緊急事態宣言全面解除/デジタルニューディール

A 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政府による緊急事態宣言の全面解除から約2週間が経過する。
B 「段階的に通常業務への復旧を進めていく」という対応から、具体的な数値目標を盛り込んで新しい生活様式を見据えた働き方改革の推進を前向きに打ち出すものまで、各社の姿勢はさまざまだ。
A とりわけ建設コンサルタントでは、コロナ禍を契機とした新たな働き方が進展している印象がある。
C 建設業より先行して、昨年4月から改正労働基準法が適用され、時間外労働の上限規制を意識した多様な働き方への対応が進んでいたことも大きい。建設技術研究所は4月28日の段階で、ICTインフラとテレワークに則した社内システムの整備やサテライトスペースの拡充と働きやすい職場環境の実現、テレワークを活用した管理・生産体制の変革などを恒常的な施策とすることを表明していた。パシフィックコンサルタンツは、「パシコンワークスタイル」と銘打ち、常時30-50%のテレワーク実施に加え、サテライトオフィスも含めたオフィスのあり方を早急に検討し、柔軟で多様性に富んだ生産性の高い働き方を目指す。パスコも、テレワーク環境を前提とした生産プロセスへの転換や、スマートオフィス環境の実現を打ち出している。
A 一方でゼネコンの対応は。
B 大手・準大手ゼネコンは、5月の連休明けにはほぼ工事を再開しており、緊急事態宣言が解除されても大きな変化はない。例年、6月に開催されてきた安全大会は、多くの企業が中止にしている。事務系の社員のテレワークについては、ほとんどの企業が継続しており、大林組は「当面の間、実施率50%を目安」に継続すると発表した。テレワーク可能な業務と不可能な業務などを見極めるために、すべての業務の棚卸しをしているゼネコンもある。ただ、現場は稼働しており、取引先も通常業務に戻りつつある中でテレワークを続けるのは、かなり難しいのも事実だろう。

緊急事態宣言の全面解除を受け、朝の通勤者数も徐々に増えてきている(東京駅、6月2日午前9時ごろ)

◆「持たざる者」への配慮が必要

A 話は変わるけど、5月29日に開いた政府の経済財政諮問会議で、社会資本整備の「デジタルニューディール」が民間議員から提言された。
D アフターコロナの社会経済の変革・刷新を見据え、デジタル化・スマート化を施工、維持管理、まちづくり、公共サービス、防災・減災といったすべての政策に展開するとともに、次期社会資本整備重点計画で関連するKPI(重要業績評価指標)を設定した取り組みの推進による、社会資本整備の抜本的な生産性向上を提言している。会議での議論を踏まえ安倍晋三首相は、「今後の新たな日常の構築のためには、あらゆる分野でのデジタル化、スマート化の導入が不可欠であり、社会資本整備もその例に漏れない」とした上で、次期社会資本整備重点計画の策定に当たって、デジタル化・スマート化を今後の社会資本整備を貫く原則と位置付けて検討するよう指示した。
E 人口減少に伴う担い手不足に頭を抱える中小建設業にとって、省人化や生産性向上に寄与するデジタルツールの導入は避けて通れないものの、導入資金やツールを使いこなせる人材の確保・育成などの課題もある。会議で有識者が提出した参考資料でも、ICT施工の経験割合は大企業ほど高く、地域の中小建設業への普及が課題と指摘している。
A 「デジタル化・スマート化」「社会資本整備のデジタル・トランスフォーメーション」など、言葉だけが先走っている印象も受ける。建設産業界の持続的発展に向けては「持たざる者」への配慮を忘れてはならない。

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら