【特殊条件に積極提案】アイデア満載 中国自動車道で半断面施工を実現させた"小技"の数々 | 建設通信新聞Digital

5月8日 水曜日

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【特殊条件に積極提案】アイデア満載 中国自動車道で半断面施工を実現させた”小技”の数々

 作業員の数十cm隣を大型トラックや一般車が駆け抜けていく–。そうした環境での工事が中国自動車道で進んでいる。ピーエス三菱が施工する「中国自動車道(特定更新等)大谷橋他2橋床版取替工事」(岡山県美作市ほか、発注者=NEXCO西日本)の大谷橋上り線床版取り替えだ。高速道路を全面通行止めにせず、橋梁の床版を取り替えるという命題を実現するため、同社とNEXCO総研が開発した『半断面床版取替工法』のほか、「“小技”をたくさん盛り込んだ」(三島康造取締役常務執行役員技術本部長)というアイデア満載の現場だ。

大型車が走行する脇で新しい床版の設置作業が続く


 大谷橋(上り線)は、長さ106.5mの鋼3径間連続非合成鈑桁橋で、上り線と下り線の橋梁に高低差があるため、下り2車線を対面通行にして上り線の床版を取り替えるといった対応が難しい。上り線全面通行止めを避けるため、「半断面床版取替工法」を採用して、2車線のうち1車線で施工しながら1車線は供用することになった。橋梁幅を9.9mから10mにまで拡幅した上で、走行車線と追越車線の間に独自開発の仮架設防護柵を設置し、車道幅3.25mを確保することで、時速50㎞規制の片側車線供用を可能にした。

老朽化でひび割れた床版


 床版取り替えの流れは、既設床版を撤去して鋼桁のフランジを処理後、プレキャスト(PCa)PC床版を独自開発の架設機で設置する。PCaPC床版同士は、PCと特殊な接着剤でつなぐため、床版を支える縦桁(ストリンガー)が不要になる。PC床版の継手には、「MuSSL工法」を採用。既設床版が薄くループ継手の床版を適用できない場合に効果を発揮する工法で、継手主筋をネジ節鉄筋として端部に円形ナットを設けた構造にすることで、220mmの床版厚が可能になる。接合部は下部のコンクリートが付き出した「あご付き」となっており、接合部の底型枠が不要になる。

MuSSL工法を採用したPC床版の接合部


 追越車線側の1期工事では、壁高欄付き床版「フルキャスト壁高欄」を採用して現場での施工省力化を実現した。走行車線の2期工事では、新しいPCaPC床版を架設後、追越車線の床版と接合する1次緊張で走行車線側の床版がわずかに浮き上がり、架設機による既設床版の引きはがしができなくなる。この解決策として、隙間に袋を差し込み、無収縮モルタルを注入して架設機を仮支持できるようにした。作業は午前中に既設床版を3枚はがし、午後から新設床版を3枚設置するという作業サイクルを設定した。

 志道昭郎広島支店土木技術部設計グループリーダーは、「片側を供用しながら安全性を確保しつつ、工程を守って品質を確保できることが確認できている」とこれまでの施工に自信を深めている。既に「NEXCO西日本管内でも問い合わせがきており、地方自治体の橋梁など特殊条件下での施工に積極的に提案したい」と話す。

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