KASASAGI(東京都中央区、塚原龍雲代表取締役)は、伝統工芸品のEC(電子商取引)サイトとして創業し、ことし4月に特定建設業許可を取得した。2025年2月の1級建築士事務所設立に続き、設計・施工の体制を整えた。塚原代表は「日本の伝統工芸は海外から高い関心を得ている。それを生かすには伝統工芸品と空間をセットにした提案が効果的だ」と狙いを語る。
◆「ちょっと背伸び」から建築へ
塚原代表は米国の大学に在学中、日本の伝統工芸に対する海外からの高い関心を感じたという。それをきっかけに伝統工芸に関わる起業を決意し、20年3月に同社を設立した。
当初は職人と会うため全国を回りつつ、法人の周年記念品など伝統工芸品のニーズを開拓した。その中で、不動産デベロッパーから伝統工芸品を生かした空間づくりの相談を受け「ちょっと背伸びのつもりで」プロジェクトに参画。これが建設との最初の接点だった。
空間づくりの中で、建築の知見を社内に蓄積する必要性を痛感した。「例えば、作品を据え付けるときに、社内に図面を読める人材がいなかったせいで、図面での指示が出せず苦労した。施工で不具合があった場合に責任の所在が曖昧な場面が生じるなど、当社のほかゼネコンや建築主にも関わる問題もあった」と振り返る。これらの経験を踏まえ、自社で設計や施工ができる体制を整備した。
強みが発揮されるのは、内装に使う和紙を不燃にしたり、外装に高岡銅器を使う場合の耐久性確保などといった、建築に関わる基準やニーズを伝統工芸品を使いつつ充足したいケースだ。それに当てはまる建物はさまざまで、「当社が主体として設計や施工を手掛ける建築物で言えば、事業費が数百万円から数十億円ほどの幅がある。より大規模な建築物の一部に参画することもある」と補足する。
◆ブランドとESG、CSR
伝統工芸が関係する建築物の価値について、二つのポイントを挙げる。
一つ目は施設の利用者にもたらす価値で、高級ホテルや観光施設、商業施設などが該当するとみる。伝統工芸はその品ごとに背景がある。複数の工芸品を空間と組み合わせて価値を最大化するには、博物館や美術館の展示にも似たノウハウが必要だが、「うまくプロデュースできれば、日本の伝統工芸も欧州のそれに匹敵する大きな経済的価値を生む。モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)やエルメスなど、欧州の伝統工芸に根ざしたブランド事業を持つ企業の中には、世界有数の株価時価総額を誇るものもある。これは伝統工芸が大きなビジネスの源となり得る好例だ」と期待を寄せる。
二つ目はESG(環境、社会、企業統治)やCSR(企業の社会的責任)に関わる価値だ。「物流倉庫などを計画するとき、計画地近くの伝統工芸品を建築物に活用すると、計画に対する地元の理解醸成を促すことができる。伝統文化の保護の取り組みとして、ESGやCSRの観点から投資家の評価にもつながる面もある」と説明する。
伝統工芸に大きな期待を寄せつつ、現状に危機感も抱く。「工房を訪れたら『半年後に閉業するつもりだ』と言われたこともある。高い技術を持つ職人の中にも、事業面で苦境にある人が少なくない」と指摘。KASASAGIの事業を通して販路やブランドを強化し、「伝統工芸の社会的・経済的評価を高めて、技術のある職人が情熱を持って制作を続けられる環境整備を急ぎたい」と語る。
現状への危機感の一方、長期的な目標は大きい。「私は2000年生まれで、あと40年働けるとして、その間にKASASAGIの株価時価総額を世界一にしたい」と力を込める。



