【リニューアルにも】打診点検不要の完全乾式タイルをワンタッチで! 不二窯業ら開発 | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【リニューアルにも】打診点検不要の完全乾式タイルをワンタッチで! 不二窯業ら開発

工事費は1m2当たり3万円前後

 不二窯業が、LIXILと日本ボンデッド(東京都港区)の2社と手を組み、完全乾式タイル張りの新工法を開発した。「タイルをはめ込む際のフィット感を知ってほしい」と、不二窯業の田中信之取締役工事統括部長は『クリップロックオン』と命名した新工法への手応えを口にする。低迷が続く外壁タイルの市場だが、ワンタッチで取り付けられる作業性が評価され、設計者や施工者からの引き合いが早くも出始めた。
 3社が開発に向けて動き出したのは2年前。外壁タイルは竣工から10年後に打診点検が求められるが、壁に取り付けた専用部材を介して設置する乾式工法の場合は打診の適用除外を受けられる。タイル施工の不二窯業、タイル製造のLIXIL、金具製造の日本ボンデッドがそれぞれの技術を持ち寄り、施工性が高く、経済性に優れた乾式工法を検討してきた。
 組織したワーキンググループには総勢10人が参加した。導き出したのはクリップのようにワンタッチで取り付けることができるアイデアだった。タイル裏面と下地金具をどうつなぐか。LIXILタイル事業部タイル営業部の本橋正彦氏は「タイルが焼き物だけに、どうしてもミリ単位の誤差が出てしまう。裏面の凹凸部分にうまくフィットする金具にたどり着いたことが大きかった」と振り返る。
 タイル裏面の引っかかり部分が、はまり込みやすいように金具先端を山型にした。専用のアンカーボルトも開発し、強度も高めた。当初は金具を横に配置するプランを前提に工法の開発を進めてきたが、金具本数が必要以上に増えてしまい、コスト増を招くことが分かり、金具を縦に配置するプランに変更するなど試行錯誤を繰り返した。

金具の引っ張り試験も実施済み

 LIXILはタイルの強度に加え、金物からの引っ張りについても入念な試験を行い、製品化への準備を進めてきた。開発したタイルは工法専用の特注品となり、幅72mmの二丁掛けサイズ。面状やカラーバリエーションも要望に応じて対応する。受注生産となり、納期は約3カ月という。
 タイル剥落事故で2008年から定期点検が強化されたのを機に、外壁タイルの市場は低迷を続けている。10年後の打診検査がネックとなり、採用を控える動きが広まったことが要因の1つだ。マンションの場合、外壁タイル使用量は半分以下にまで減少しているとの調査結果もある。
 不二窯業は外壁タイル市場の復活を目指し、乾式タイルのラインアップ拡大に乗り出しており、タイル先付けのプレキャストコンクリートではタイル裏面にM字のクリップをはめ込む独自工法を展開中。今回開発したクリップロックオン工法では完全乾式タイル張りの利点を生かし、多様な建物用途への展開を見込む。
 価格は、材工一式で1㎡当たり3万円前後に設定した。既に庁舎、学校、寮などの用途から引き合いがあり、好調なスタートを切った。S造建物への対応も見据え、押出成形セメント板への対応も試験済み。松本康之常務事業本部長は「新築に限らず、既存建物への対応も今後は考えており、まずは年間10億円の売り上げを目指していきたい」と力を込める。

タイルは受注生産でカラーバリエーションも多彩

 特にリニューアル対応では壁面に金具を取り付ければタイル張りに装いを一新できるだけに「需要は大いにある」(田中取締役)と期待感をのぞかせる。外装の変更需要がある店舗系施設に加え、地下鉄駅舎の出入り口なども重点ターゲットの1つだ。さらに戸建て住宅市場への参入も視野に入れている。
 3社は多様な用途への売り込みを加速させるため、600mm角サイズの外装タイル向けの工法も開発を始めた。「タイルの大きさが変わることでエントランスなどへのニーズにも柔軟に対応できるようになる」(同)。東京五輪前の旺盛な建築市場に狙いを定め、タイル業界が巻き返しを図ろうとしている。

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