【国際建築活動支援フォーラム】現地で活躍する日本の若手建築家、"外国人"としての仕事語る | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【国際建築活動支援フォーラム】現地で活躍する日本の若手建築家、“外国人”としての仕事語る

ホーチミンに拠点を構える日本人建築家の西島光輔氏(左)と佐貫大輔氏

 国際建築活動支援フォーラム(JSB、小倉善明理事長)が1月23、24日にベトナム・ホーチミン市で開いた日本・ベトナム建築フォーラム2018に、ホーチミンで活躍する日本人建築家、西島光輔氏(InReStudio)と佐貫大輔氏(sda・)が参加した。日本に留学経験があるベトナム人建築家ヴォ・チョン・ギア氏の事務所にともに勤務後、現地で独立。海外で設計監理活動を展開する若手の声を聞いた。
 ベトナム人スタッフを西島氏は2人、佐貫氏は7人抱える。「文化が異なるスタッフをまとめるのは難しい」のが共通認識という中、「自分をベトナム人化せず、外国人であり続けながら、彼らの良い部分を引き出したい」(西島氏)と語る。スタッフの技術力はオートCADの扱いなど技術的なレベルは高いものの「建築のジャーナルがなく、インターネットから学ぶため、建築を消費するスピードが速い。クリティークや建築を思考する経験が極端に少ない」(同)という。
 会話は英語で、現地の言葉を覚える必要はないが、施主とはスタッフを介してベトナム語でやり取りする。「スタッフと考え方をシェアするため、毎日一定時間を割いて自分の考えを伝えている」(西島氏)、「一緒に考えるパートナーになってほしいが、あまり反応は良くない」(佐貫氏)と、内気な国民性もあり、意見を求めるのは難しい。
 物価は日本の5分の1程度。設計監理料も相応だが、「仕事で最も厳しいのは時間」と口をそろえる。設計期間は日本の半分以下で、6000㎡規模の学校が設計開始から18カ月で竣工する。日本の若手建築家が経験できない規模や件数の物件を手掛けるが「まったく違う筋肉を鍛えている感覚」(佐貫氏)、「クライアントとの力関係や現場の動き方など日本とは相当なギャップがある。デザインにこだわりがある人ほど直接参入するのは難しい」(西島氏)とも。
 周辺諸国を見ると「ベトナムやインドネシアは恵まれている。中国や台湾はインテリアが多い、国内でもホーチミンとハノイでは状況がまったく異なる」(佐貫氏)。風水の文化が根強く残るベトナムでは「富裕層ほどその傾向が強い。また、先祖を祭る祭壇に定位置があり、階段の段数も縁起を担ぐ」(西島氏)と独特のルールが求められることもある。
 今後の活動については「日本に比べて施主のリテラシー(建築に対する理解)がまだまだ低い。文化的な違いもあるが、時間内でしっかりと読み込めるようになれば、ここで仕事をしている意味がある」(西島氏)。「建築を取り巻くコンディションが全く違う中、建築をしっかりと考えるきっかけをつくりたい。カタチとしてベトナムに向けてつくりたいもの、発信していきたい」(佐貫氏)という。ともに機会があれば日本での活動を展開していく考えだ。

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