12年目となる今回のコレクションは「融合(FUSION)」を全体テーマに掲げ、計43大学が参加した。このうち4日に開かれた全国修士設計展の公開審査では1次審査(非公開)を突破した11作品を、千葉学氏(委員長)、石川初氏(モデレータ)、重村珠穂氏、成瀬友梨氏、原田真宏氏、山脇克彦氏の6人が審査。プレゼンテーションと巡回審査をもとに1人3票を持ち票に投票した上で総括セッションを行い各賞を決めた。
地域再生のためのモビリティ変革案やプラスチックごみを建築構成材に転化する提案、環境変化に応答する「動く建築」や離島での魅力ある暮らしを構築していく提案など、「いずれも誠実にリサーチし、自分の体験に照らし合わせたすばらしい提案」(千葉委員長)がそろう中、グランプリとなった『山を登ることと建築』は、山を登ることと建築をつくることの類似性を研究したもので、山小屋を装備品の延長ととらえ、運搬施工の容易な規格と工法でつくられる5年間の建設プロジェクトを提案。「極めて個人的であり具体的で個人と世界が建築を介して接続しようという意思を強く感じた」(原田氏)などと高く評価された。
総評では「小さく切り分けるのではなく、全身で世界と建築に向き合ってほしい。これから建築をやっていく上で20代をどう過ごすかがとても大事になる」(原田氏)などと激励する声が上がり、千葉委員長も「これだけの提案ができる人たちが建築の世界に来てくれることに勇気付けられる思いがした。これから自分に投資するためにどういう環境に身を置くべきか考え、建築をつくり続けることをこれからもやってほしい」と呼び掛けた。
特別協賛の建築資料研究社/日建学院から副賞としてグランプリ受賞者には1級建築士講座の無料受講権、審査員賞受賞者は半額受講権が授与された。