【大成建設】搭乗するような感覚! 臨場型遠隔映像システム「T-iROBO Remote Viewer」が実現場で威力発揮 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【大成建設】搭乗するような感覚! 臨場型遠隔映像システム「T-iROBO Remote Viewer」が実現場で威力発揮

2つのカメラの視差から奥行きを把握

 大成建設が開発したヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使った臨場型遠隔映像システム「T-iROBO Remote Viewer」が実現場で高い効果を上げている。重機を遠隔操作する際に、従来のモニターの映像を見ながら操作する方法と比べて、奥行きや距離感を把握しやすく実際に搭乗する場合と同等の感覚で操作できることが大きな特徴だ。さらに、作業に当たる人数も削減できる。大成建設・東洋建設・大豊建設JVが川崎市で施工を手掛けたニューマチックケーソン工法による「川崎港臨港道路東扇島水江町線主橋梁部(MP4)橋梁下部工事」で初導入し、効率的な掘削を実現した。
 自然災害直後の復旧対応工事などで活用される重機の遠隔操作は、まず俯瞰用のカメラを現場周辺に複数台設置する必要がある。その後、作業室で複数のモニターに映し出される映像を見ながらカメラアングルの操作者と、重機の操作者の2人体制で作業するのが一般的だ。そのため、重機にオペレーターが搭乗する通常の操作と比べ、作業効率が低下することが課題だった。また、俯瞰用のカメラの設置には時間がかかるほか、映し出される映像は実際の人間の視野より狭く、バケットと掘削面の距離感や奥行きの把握が難しかった。
 T-iROBO Remote Viewerは、重機の運転席に人間の左右の目に対応する魚眼カメラを搭載する。操作者はHMDを装着してカメラの映像を見るため、遠隔操作でありながら臨場感のある映像を確認して重機を操縦することができる。そのため、従来のようなカメラアングルの操作者も不要となり、オペレーター1人での遠隔操作を実現する。

臨場感のある映像を確認しながら操作できる

 カメラの視野角は220度で、カメラの視差により映像からでも奥行きを把握できる。操作者の頭の向きはセンサーで角度情報として取得。魚眼レンズで撮影した映像は角度情報を基に、くり抜くようにHMDに表示され、操作者の頭の動きに追従して見たい方向の映像を即時に映し出すことが可能となる。
 システムを開発後、初弾としてこの工事に導入した。大成建設の加藤崇技術センター生産技術開発部生産技術開発室情報化チーム課長は「無人化のニーズは災害復旧がメインのため、通常の工事で無人化となるとニューマチックケーソン工法によるこの現場だった」と採用の理由を明かす。
 ケーソンの作業室内にある4台の掘削機のうち、1台に同システムを搭載。カメラの映像はHDMIケーブルやLANケーブルといった有線で現場内の遠隔操作室のパソコンにつないだ。システムを採用した結果、バケットと掘削面の距離感の把握に効果的だったとともに、即時に重機の横方向を確認できるため、旋回時の衝突防止など安全確保にも大きく貢献した。

ケーソン工事現場に初適用した

 施工時に限らず、掘削機の点検にも有効性を発揮する。同工事では週に1度、作業員が作業室内の重機を点検していたが、機械へのグリスが適切に差せているかなどをHMDの映像から確認していた。森田泰司技術センター生産技術開発部生産技術開発室参与は「通常は重機に1台ずつカメラを設置していたが、このシステムでは1台で全ての掘削機のメンテナンス状況を確認できるため、通信の容量を減らせて手間もかからない」とその効果を明かす。
 今後は重機の後方に設置したカメラの映像や、HMDを装着したままでは見えにくい手元の操作盤などの情報をHMDに表示するなどの改良も検討しており、より使いやすいシステムの実現へ開発を進める。

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