【東京都選定歴史的建造物】ゆるやかに保存し景観づくり 都市整備局の取り組み | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【東京都選定歴史的建造物】ゆるやかに保存し景観づくり 都市整備局の取り組み

 開発事業が活発に進む東京では、気づかないうちに歴史的景観が失われようとしている。そのため、歴史的景観を継承し、調和を崩さず次世代に伝えることが求められている。東京都都市整備局は東京都景観条例に基づき、原則建設後50年を経過した歴史的価値がある建造物で景観上重要なものを、知事が「東京都選定歴史的建造物」として選定している。
 東京都選定歴史的建造物は、知事の諮問を受け、景観審議会で調査・審議し、建物所有者の同意を得て、区市町村の意見を聞いた上で、知事が選定する。所有者からの理解と協力を得て、都は支援する。2018年に入り、都は新たに「塔の家」「ヒルサイドテラスA・B棟」を3月26日付で、「旧博物館動物園駅駅舎」を4月19日付で選定した。文化財や重要文化財に指定されたものなどは選定を解除し、4月27日時点で93件を選定している。

ヒルサイドテラスA・B棟

 都都市整備局がまとめた『歴史的景観形成の指針』では、東京都選定歴史的建造物などの周辺100mの範囲内で建築行為などを行う事業者に対して、▽規模▽配置・形態▽意匠▽素材・色彩▽外構・緑・屋外設備--について、歴史的景観への配慮を求めている。
 都の担当者は「歴史的景観は長い年月をかけてつくられたもので、開発などにより一度失われると、元に戻すのは難しい。強制力はないが、行政として配慮をお願いしたい」(同局都市づくり政策部景観担当課)と説明する。
 選定基準は、▽原則として建設後50年を経過している▽東京の景観づくりで重要なもの(地域の歴史的景観を特徴付け・地域のランドマークの役割・都民となじみが深く、地域のイメージの核)▽できるだけ建設当時の状態で保存されている▽外観が容易に確認できる--の4点とし、「所有者の事情を考慮し、ゆるやかに保存し、景観づくりの中で活用する」が基本的な考え方だ。

塔の家

 塔の家(渋谷区神宮前)は、1964年東京五輪時の道路拡幅で生じた角地20㎡に建てた狭小住宅。建築家の故東孝光氏が都市に住むことにこだわり、自宅として66年に建設した。
 規模はRC造地下1階地上5階建て延べ65㎡。地下が収納・作業室、1階が駐車スペース、玄関ポーチ、2階が居間、食堂、台所、3階が浴室、トイレ、4階が主寝室、5階が子ども部屋、屋上テラスとなっている。
 ヒルサイドテラスA・B棟(渋谷区猿楽町)は共同住宅、店舗、事務所からなる、旧山手通り沿いの集合建築「ヒルサイドテラス」のうち、第1期の2棟となる。槇文彦氏の設計により69年に建設された。規模はRC造地下1階地上3階建て延べ1849㎡。
 その後、C棟、D・E棟、アネックスA・B棟、ヒルサイドプラザ、F・G・H棟の建設を経て、第7期のヒルサイドウエストA・B・C棟が98年に完成した。

旧博物館動物園駅駅舎

 旧博物館動物園駅駅舎(台東区上野公園)は、京成電気軌道(現京成電鉄)の駅舎として33年12月に開業した。帝室博物館(現東京国立博物館)や恩賜上野動物園の最寄り駅として利用されたが、97年に営業休止、04年に廃止された。
 規模はSRC造平屋建て約500㎡。方形屋根で円柱の付いた出入り口部分と、陸屋根の階段部分を組み合わせた外観が確認できる。鉄道施設としては初の選定となる。

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