【安藤忠雄】知恵を絞り長く付き合って環境を育てる 淡路夢舞台で研修・同窓会 | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【安藤忠雄】知恵を絞り長く付き合って環境を育てる 淡路夢舞台で研修・同窓会

講演する安藤氏

 安藤忠雄氏の代表作の1つである複合リゾート施設「淡路夢舞台」=写真=(兵庫県淡路市)の建設にかかわったゼネコンや設備業、造園業、各種メーカー関係者らが年に1度集まる建築技術研修会(安藤忠雄建築研究所主催)が17、18日の2日間にわたって同地で開かれた。
 研修会として第17回、同窓会として第18回となる今回は「今ここから、新しい一歩を踏み出す」をテーマにプレセミナーやレクチャーなどを開催し、参加した約320人は旧交を温めた。
 17日のレクチャーで安藤氏は、淡路夢舞台プロジェクトや直島での美術館プロジェクト、長尾小学校(神戸市)のプロジェクトなどを紹介。「子どもを育てるのは大変難しいが、環境も同じ。コツコツやって長く付き合うことが大事だ」と、自然再生の取り組みを振り返った。
 プロジェクトで困難な局面にぶつかった際にはいずれも「考えて道を切り開いてきた」と話し、「考えることで前に進むことができる。日本には資源もエネルギーもない。知恵を絞る力を養わなければならない」と力説。出席した建設関係者に「皆さんの仕事は人間が生きていくため、人々の心の中に残っていく空間をつくる大変な仕事だ。プライドをもってほしい」と呼びかけた。
 その後、自身が整備し大阪市に寄付する図書館プロジェクト「こども本の森 中之島(仮称)」について、「子どもたちにたくさんの本を読む機会を与えたいと考え、企画した」と意図を説明。「財産を持って死ぬことはできない。自分たちが社会的産物であるということを認識し、還元していかなければならない。子どもたちに自由の精神と忍耐力、協調心、持続力、勇気という遺産を遺したい」と思いを語り、「物事を組み立て前に進めるために、学歴は必要ない。個人次第だ。誰にでも可能性はある」と締めくくった。
 レクチャーでは、竹中工務店の小林道和氏と大林組の金子智弥氏も話題提供した。
 小林氏は「最新木造建築技術」をテーマに講演。同社が開発した耐火集成木材「燃エンウッド」やCLT(直交集成板)を活用した作品を紹介し、「当社では今後も『木のある未来を見たいから』を合言葉に木造建築を推進していく」と語った。
 金子氏は「3Dプリンターの建築への活用の可能性」と題し、ロボットアームによるモルタル積層実験の結果や海外での実用事例を紹介し、「構造の最適解は自然のデザインに近づくと言われるが、その製造上の課題は3Dプリンターが解決する」と話した。
 このほか、プレセミナーでは、西松建設の中筋知行氏が「働き手の多様性」について、大和ハウス工業の竹林桂太朗氏が「建築と不動産の協働」について、それぞれ解説した。
 18日には参加者による記念植樹や淡路市内にある安藤氏設計の本福寺水御堂の見学なども催された。

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