【シラス壁材】こだわりの100%自然素材が人気拡大中! 厄介者が抜群の効果持つ壁材に | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【シラス壁材】こだわりの100%自然素材が人気拡大中! 厄介者が抜群の効果持つ壁材に

 「発明ではなく発見だった」。リフォーム住宅を中心に手掛ける高千穂(横浜市)の新留昌泰社長は、九州南部の地層に分布する火山灰のシラスを主原料にした「シラス壁材」の誕生を、そう説明する。消臭や調湿の効果に加え、空気浄化の機能をも持つ100%自然壁材としての評判が口コミで広がり、販売から20年間で取引した工務店は1万2000社にも及ぶ。「これからは一般建築分野にもシラス壁を売り込む」と、非住宅市場開拓の販売子会社を設立し、領域拡大に打って出た。

新留昌泰社長

 シラスとの出会いは22年前にさかのぼる。工務店として年間30棟ほどの戸建て住宅を手掛ける中で「良い壁材はないか」と探していた。当初は海や川に生育する珪藻(けいそう)の遺骸が化石化した堆積物の珪藻土を使い始めたが、期待した性能を実感できずにいた。「それならば」と、新留社長は生まれ育った九州南部一帯に広がるシラスに目を付けた。
 「子どものころから生活の場にあったシラスは災害を起こしたり、農作物を育てるにも不向きな厄介者だったが、壁材に使うとイメージは一変した」と振り返る。2年間におよぶ研究開発での試行錯誤を経て、100%自然素材を使った壁材として売り出したが、実は最初から調湿・消臭・殺菌の効果を見いだしていたわけではなかった。

宮崎県の都城市に所有するシラス台地

 気付かせてくれたのは顧客だった。「室内の臭いがいつの間にか消えた」「アトピー性皮膚炎やぜんそくが治まった」などの顧客反応が相次ぎ、化学メーカーに分析を依頼して初めて多くの効果をシラス壁が持ち得ていることを知った。「シラスの持つポテンシャルの大きさを発見した」瞬間でもあった。
 販売から20年が経過し、出荷量は右肩上がりに推移しており、現在は月に200-300tを出荷する。取引先は1万2000社を超え、全国工務店の1割が愛用するほどまで浸透した。「おかげさまでシラス壁の良さが受け入れられている」。コテ、ローラー、へらで塗られる施工の手軽さもあり、左官から塗装、内装など職種を問わず扱える点も売りだ。
 シラスを壁材として成立させるためには、施工してから固まるまでの間に剥がれ落ちないように抵抗力を上げる必要があった。固まるまでの5、6時間を耐えるため、さまざまな調合を繰り返した。「シラス以外に10種類もの素材を使っているが、これら全て100%自然素材というところにこだわり抜いた」と力を込める。

既に非住宅への導入事例も積み上げている


 非住宅開拓に動いたのは2017年末。販売会社の高千穂ライフニックス(横浜市、稲森春男社長)を設立し、営業体制を整えた。住宅への採用が増えるにつれ、設計者などに評判が広がり、一般建築物への採用も着実に積み増してきた。営業の最前線に立つ稲森社長は「設計事務所の反応も良く、多くの引き合いを得ている」と手応えを口にする。
 シラス壁材の年間売り上げは現在10億円規模。非住宅開拓による需要増を見越し、工場増産の準備も進行中だ。色味も要望に応じて自由にオーダーでき、首都圏だと注文から3日あれば納品できる体制も確立した。新留社長は「住宅新設着工の減少もあり、以前から非住宅分野への展開時期を探っていた。5年以内には売り上げを3倍増の30億円規模に引き上げたい」と明かす。既に東京都内の学校施設では600㎡に採用され、空港関連施設への納入も決まり、順調なスタートを切った。

グッドデザイン賞も受賞

 壁材以外へのシラス活用にも本腰を入れ始め、農業、畜産、ナノテクノロジーなどの分野にも手を広げている。シラス土壌を混交させた田んぼで育てた『マグマシラス米』はフード・アクション・ニッポンアワードの研究開発・新技術部門で入賞するなど、成果も徐々に現れてきた。
 九州南部に広がるシラス台地は、堆積する場所によってシラス自体に赤みがかり、中にはアルカリ性が強いものも分布している。高千穂が保有する宮崎県都城市のシラス台地は他の地域に比べ色が白く、幅広い粒分布と中性に近い性質の良質なシラスだ。新留社長は「高千穂シラスのブランドをもっと知ってもらいたい」と先を見据えている。

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