【現場最前線】1フロア5万6000㎡! 国内最大級の大型物流施設に技術力で挑む | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【現場最前線】1フロア5万6000㎡! 国内最大級の大型物流施設に技術力で挑む

 千葉県市川市で、1フロアの床面積が5万6000㎡に及ぶ国内最大級の大型物流施設の建設が進んでいる。事業主はESR(東京都港区、スチュアート・ギブソン社長)で設計・監理、施工を戸田建設が担当している。設計施工のメリットを生かし、顧客の要求性能である「合理的(ローコスト)で高品質・高耐久性」を実現するため、保有する構造技術を活用しているほか、大型物流施設特有の課題解決に取り組んでいる。

1月完成を目指す定温マルチテナント型倉庫

 施設名は「ESR市川ディストリビューションセンター」。規模がRCS造(柱RC、梁S造)4階建て延べ約22万5000㎡の定温マルチテナント型倉庫だ。建設地は市川市二俣678-55ほか。2019年1月の完成を目指している。
 建物は、上り・下り専用のランプを設置し、建物内車両動線をすべて一方通行とすることで、利用者にとって明快で安全性の高い施設計画としている。各テナントで、コンテナやトラックの荷台とプラットフォームの高低差を調整する装置であるドックレベラーや、垂直搬送機の増設が可能な高いフレキシビリティーを確保する。全館LED照明の採用や外装材の高い断熱性能などにより、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)でAクラスを取得予定だ。また、特別高圧2回線受電や、2台の非常用発電機の設置など、災害時の機能確保を目指している。
 この工事の新たな技術的取り組みとして、1フロアの床面積が、同社実績比で平均的な物流施設床面積の約11倍に達する5万6000㎡に及ぶことから、乾燥収縮によるひび割れを最小限とするため、床については約60×60mごとに帯状に後打ち部分を設置し、2カ月間以上ずらしてコンクリートを打設している。屋根は、温度変化による伸縮に追随できるように変形追随機構(ルーズホール)を折板方向に2列設けて、不具合を防ぐ配慮を行っている。
 また、2層分の大きさで1つのX型ブレースを構成する「2層1体X型ブレース」を採用している。これにより、ブレース性能が効率的に発揮されるとともに、ブレース数や大梁鉄骨を削減している。

2層1体X型ブレース

 倉庫本体とランプの接続部は、エクスパンションジョイントを設置するのが一般的だが、この施設ではトレーラーが繰り返し走行することによるエクスパンションジョイント金物の劣化を防ぐため、コンクリート床で接続し一体化している。倉庫本体とランプは形状や剛性が異なるため、地震発生時には接続部に大きな力がかかるが、接続部を鉄骨ブレースで補強することで、十分な耐力を確保している。
 このほか、倉庫本体は大きな積載荷重に対し、合理的な架構となる柱RC、梁S造の「TO-RCS工法」としているが、中央車路とランプは工事資材の搬入を容易にするため、S造として先行建て方を行い、工事車両の通行を可能にして工期の短縮を図っている。
 齊藤英樹作業所長は「天候が崩れると、1週間、1カ月先まで影響するので、それを修正していくのが一番大変なところだ」とした上で「特に基礎部分のコンクリートは数量が多いので、天候が崩れてくると、工程を取り戻すのに非常に苦労した」と大型物流施設建設ならではの苦労を語る。現場の安全対策については「安全は中心となる価値であるということを全員が認識し、当たり前に行わなければならないことを当たり前に行う。決められたルールを守らせる」と強調する。
 同社は、保有するさまざまな構造技術の活用を、さらに推進・発展させ、今回の大型物流施設の大きな積載荷重への対処など、新たに生じてくる高い要求に対しても、合理的で安心・安全な構造の提案を続けていく。今後も顧客の要望に最も適した性能が確保できる技術を適用できるシステムを構築・改良し、高品質な建物を実現していく方針だ。

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