【帝塚山住宅群】20年切れ間なく造り続け「大阪まちなみ賞」に! Y's design建築設計室の哲学 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【帝塚山住宅群】20年切れ間なく造り続け「大阪まちなみ賞」に! Y’s design建築設計室の哲学

 大阪有数の閑静な住宅地である帝塚山。このエリアでの住宅群のプロジェクトが、第37回大阪都市景観建築賞(大阪まちなみ賞)の奨励賞に選出された。素材感を生かした端正なデザインやプライバシーに対するきめ細かい配慮、まちなみの景観向上への寄与が高い評価を受けた。手掛けたのはY’s design建築設計室(大阪市)。1997年に帝塚山で創業して以来、このエリアの住宅を切れ間なく造り続け、その数は50件に達した。

帝塚山西2丁目の家

 入塩安高代表は「お客さまの要望に真摯(しんし)に向き合い、良いものをつくり、喜んでいただく。その繰り返しがいまにつながっている」と話す。帝塚山のプロジェクトにおいて、事務所はほぼ営業活動をしていない。クライアントが作品に満足し、口コミで広まり、次につながる。これを20年間続けてきたのだ。「いまも進行中のプロジェクトを数件抱えている。いい物件が増えることでいいまちなみが形成され、社会にも貢献できる。今後もさらに増やしていきたい」と意気込む。

入塩安高代表

 帝塚山の住宅群は、格子を活用した目隠しや水平ラインを基調にしたデザインなどが特徴的だが、入塩代表は「特別なことは何もしていない。省エネや将来のメンテナンス、家族構成の変化を見越した空間づくり、アフターケアなど、小さな努力を積み重ねた結果、お客さまに満足していただけている。100%完璧な建築はできない。お客さまのかゆいところに手が届く、バランスのいい建築づくりに努めている」と話す。

北畠1丁目の家

 同事務所は関西を中心に、戸建住宅以外にも共同住宅、病院、オフィスビル、店舗、既存物件のリノベーションなども手掛けるが、クライアントを最優先にするスタンスは変わらない。「お客さまに心から喜んでいただける環境・建物を創造し、社会の進歩発展に貢献する。ならびに、全社員の物心両面の幸福を追求することが、当事務所の理念。事務所で掲げる『本質を捉えたデザイン』や『機能性+合理性に基づいた美しいデザイン』などといったデザインフィロソフィー(考え方)を一つひとつ積み重ね、理念を全うしている」という。
 Y’s design建築設計室は設計事務所でありながら、施工部門も抱えている。「設計だけでは21世紀に生き残ることはできないと考え、2012年に創設した。設計と施工を同じ会社で行うことで、お客さまにより安心していただける価格提示ができる」とねらいを話す。「多くの設計事務所では、コストの把握がむずかしい。所内に施工部門があることで、物件のどこにお金をかけてメリハリをつけるかといった能力を身に付けることができる」。これもすべてクライアントに満足してもらうための取り組みだ。

帝塚山東2丁目の家

 施工部門が手掛けるのは戸建物件など小規模なものに限定しているが、「将来はもう少し規模の大きなものも施工できる組織に成長させたい」という。
 入塩代表は、複数の設計事務所やゼネコン設計部の勤務を経て、40歳で独立した。「『お客さま第一』の意識は当時から持っていたが、10年ほど前に京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が塾長を務める経営者道場『盛和塾』に参加するようになり、その思いはより強くなった。事務所理念にある社会貢献や全社員の物心両面の幸福追求などは、入塾してから考えるようになったことだ」と振り返る。
 現在、所員は30人足らずだが、10年以内に100人くらいまで拡大させるのが目標。「そのためにも、より多くのお客さまに満足していただける作品をつくっていきたい」

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