【記者座談会】日本橋周辺の首都高地下化 ポスト東京五輪の目玉プロジェクトとなるか | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【記者座談会】日本橋周辺の首都高地下化 ポスト東京五輪の目玉プロジェクトとなるか

A 東京・日本橋周辺の首都高速道路の地下化ルート案が決まったが。
B 対象は都心環状線の神田橋JCT~江戸橋JCTまでの1.8㎞。既存の八重洲線を活用し、新設のトンネル区間は0.7㎞になる。

上空に首都高速が走る日本橋。今回決まった地下化ルート案によると、新設トンネル区間は0.7㎞となる


A ルート“案”となっているのはどういうことか。また、地下化の狙いは景観にあるのか。
C 都市計画決定を受けた段階で正式決定という意味で、ほかのルートがあったわけではない。地下鉄3路線をはじめとする過密な地下利用を考えると、このルート以外にはなかったということだろう。
D 日本橋川の景観の改善も当然、地下化する目的の1つだが、それだけではない。地下化を契機に交通機能を整理する。実際に江戸橋JCTの交通集中対策を実施する計画だ。事業費数千億円、工事期間10-20年以上の大規模プロジェクトとなることから、さまざまな視点で、都市再生のモデルとなる役割が求められることになるだろう。
A 費用負担はどうなる。
B 事業費や整備スケジュール、費用負担のあり方などは今夏の次回会合までの検討課題だ。地下化による首都高の利用料金値上げはないと断言していたので、何らかの財源確保策が必要になる。首都高の地下化によってメリットを享受できる民間事業者に負担を求めるべきだという意見もある。
C 2018年度の財政投融資計画には、大都市圏の環状道路の整備に1兆5000億円を盛り込んだ。首都高の地下化も環状道路整備と同様、渋滞緩和やストック効果の発現につながることから、さまざまな財源確保策を検討することになるだろう。
D 事業規模が大きいだけでなく、地下鉄や河川、橋梁などに影響を与えないことが求められる高難度の工事となる。ポスト東京五輪のまちづくりを占う目玉プロジェクトになることは間違いない。
A 今回の地下化案に対する地元の反応は。
E 日本橋の首都高地下化をめぐっては、公表されることはなかったものの、従来からさまざまな道路線形の検討が進められてきた。周辺では複数の再開発事業が計画されているため、地下化を要望している中央区は「再開発事業への影響をなるべく軽減してほしい」(吉田不曇副区長)との要請もあった。今回、地下化費用の縮減や再開発などの影響を踏まえ、現実的なルートを打ち出したと見ることができる。
F ただ、果たして本当に実現するのだろうか。こうした大規模プロジェクトは経済社会情勢などの変化に左右されやすい。関係者の間では「まだスタートラインに立ったにすぎない」との慎重な見方も根強い。というのも日本橋に限った話ではないが、景観論争は主観的な美意識の問題として認識されるケースがある上、時として感情的な議論に発展することも多いからだ。
G 例えば、多くの来日外国人が訪れる六本木交差点(東京都港区)の真上にも高速道路が走っている。「六本木はそのままでいいのか? なぜ日本橋だけ?」など、同様の議論がほかの地域でも起きかねない。地方部では、老朽化と予算不足から撤去を検討している橋梁さえある。実際、日本橋地元関係者の間でも「地下化など不要。金の無駄」といった声もあり、必ずしも一枚岩ではないようだ。
E 日本橋の首都高地下化は、大規模事業をめぐる費用対効果分析や受益者負担のあり方、景観問題といった古くて新しい問題を改めて突き付けている。行政や道路会社、地元関係者らが、こうした課題にどう向き合っていくのかが、実現へのかぎとなりそうだ。

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