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【首都高速道路の日本橋区間地下化事業】前例なき工事に挑戦

 いまから約60年前、1964年の東京オリンピック開催を控え基盤整備を急ぐ東京で、都心部の渋滞解消に向けて首都高速道路の都心環状線「日本橋区間」が開通した。63年12月の供用開始以降、現在、上下線あわせ1日約10万台もの車両が通行する日本屈指の交通の要衝である。

現場の様子(6月24日撮影)

 同区間は、竹橋JCT(千代田区)から江戸橋JCT(中央区)間の長さ約2.9㎞(幅員3.25m×4車線)。構造形式は上部工が鋼桁、下部工がRC杭・鋼橋脚となっている。
 長年、過酷な使用状況下に置かれたため、鋼桁の接続部(切欠き部)を中心に構造物全体に疲労亀裂が発生し、コンクリート床版にひび割れが見つかるなど維持管理の面で課題を抱え、更新が急がれる状況となっていた。
 これに加え、国による都市再生プロジェクトへの新規追加、日本橋川沿いで進む再開発計画の進展、首都高速道路の地下化を要望する中央区などの動向を踏まえ、管理者の首都高速道路会社は、2017年に大規模更新に着手する方針を示した。
 その後、日本橋川上空の首都高速道路を地下ルートで整備して構造物を更新する「日本橋区間地下化事業」を発表。21年4月から「(改)都心環状線(日本橋区間)呉服橋・江戸橋出入口撤去工事」に着手した。同工事は、日本橋区間地下化事業の地下トンネル構築に向けた準備工事となる。現在、施工者の清水建設・JFEエンジニアリングJVが高欄や床版、橋桁などを撤去している。この工事が完了すれば、約60年ぶりに一部区間で青空が望めるようになる。

首都高の都心環状線(日本橋区間)江戸橋出口の橋桁降下作業の様子

◆五街道の起点付近で準備工進む
 工事場所は東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道の五街道の起点に近い歴史あるエリアとなる。日本橋川沿いで浮上している各種都市再生プロジェクトと連携した未来志向の「新しい道づくり」を進めている。
 現場を公開した首都高速道路会社更新・建設局の長田光正日本橋工事事務所長は「今後、地下トンネル工事に関連する河川内工事を実施するため、将来的に廃止する出入り口の橋脚などを撤去している」と説明する。23年度末に橋脚の撤去などを終え、地下トンネル工事などの本体工事に着手する予定だ。計画では、新設の橋脚への受け替え工事や地上から地盤を掘削してトンネルを構築する。その後、完成した地下ルートに交通を切り替え、河川内の高架橋を撤去する。
 整備対象区間は神田橋JCT~江戸橋JCT間の長さ約1.8㎞。このうち約1.1㎞がトンネル、約0.4㎞が高架、約0.3㎞が擁壁構造となる。現在の常盤橋換気所は改築し、既存高架約1.8㎞は撤去する。概算事業費は約3200億円。

工事箇所の模型


 首都高速道路会社更新・建設局の草壁郁郎日本橋プロジェクト推進部長は「日本橋川周辺は国家戦略特区の都市再生プロジェクトに位置付けられ、まちづくりの機運が高まっている。再開発事業者と連携し、環境改善やまちの魅力向上に貢献したい」と力を込める。
 また、同じく更新・建設局の江水淳日本橋プロジェクト調整課長は「トンネル本体は、地下鉄の銀座線などを避けながら進める“針の穴を通すような工事”になる。新しいモデルケースを後世に残すため、さまざまな関係者と緊密に連携し、新しい地下ルートを完成させる」と意気込む。
 地下化事業は35年の連結路完成、40年度の事業完了を目指している。

「トンネル本体は“針の穴を通すような工事”になる」と語る江水課長

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