【災害対応空白地域】会員企業不在エリア増加 経営環境悪化で潜在的リスクも 全建調査 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

公式ブログ

【災害対応空白地域】会員企業不在エリア増加 経営環境悪化で潜在的リスクも 全建調査

 全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、都道府県建設業協会の会員企業が不在のエリアを把握するために実施した「災害対応空白地域」の調査結果を約2年半ぶりにまとめた。前回調査(2015年11月)に比べ、会員不在の市町村数は1件減少の187件とほぼ横ばいだった一方、将来的に不在になる懸念のある市町村数は前回の72件から90件に増加した。会員不在の市町村がない18県のうち、茨城など6県は不在となる懸念がある市町村を抱えており、全建は潜在的な不在リスクの増大に強い危機感を募らせている。
 地域建設業は各地で自然災害が発生するたびに、被害地域へいち早く駆けつけ、応急・復旧活動に当たっている。一方で、建設投資の偏りによる大都市圏と地方の地域間格差や大企業と中小企業との企業間格差が拡大し、厳しい経営環境にある地域建設業が地域防災に対応することが困難な地域が増大する可能性が懸念されている。
 こうした背景から、全建は各建協会員を対象に11年2月に初めて調査を実施した。3回目となる今回は4月末時点の状況をまとめた。

29都道府県が会員企業不在の市町村を抱えている。数字は不在市町村数

 全国1741市区町村に占める会員不在の市区町村割合は、前回とほぼ同水準の10.7%となった。会員が不在の市町村を抱える都道府県数は、前回と同数の29都道府県で、滋賀県は会員の新規加入によって不在市町村がなくなり、徳島県は企業合併により新たに1件発生した。
 新たに不在市町村が発生する背景には企業合併や倒産などがあり、全建は「当該地域の企業数も減少していることになる」と指摘する。
 秋田、福島、群馬、千葉、京都、大阪、徳島の7府県は不在市町村が増加した。不在市町村数は大阪(34件)を筆頭に、北海道(33件)、愛知(28件)、東京(14件)、福島(13件)、沖縄(7件)が上位を占める。
 東京、愛知、大阪の3大都市圏で会員不在の市町村が目立つが、企業の絶対数が多く、会員企業がいる自治体が比較的、近接していることなどから、全建は「災害対応に大きな支障はないと考えられる」としている。
 会員企業が1、2社しか存在せず、将来的に不在となる懸念がある市町村数は、福島、栃木、埼玉、千葉、山梨、静岡、山口、沖縄の8県で前回調査から増加した。うち、千葉、山梨、静岡、山口は前回ゼロだったが、新たに「不在予備軍」が発生した。特に千葉は前回のゼロから10件に増大するとしており、潜在的な危機感が強まっている。
 また、会員不在の市町村がない18県のうち、茨城、富山、滋賀、山口、愛媛、宮崎の6県も、「予備軍」を抱え、不在市町村が発生する可能性が高まっている。
 会員企業が不在の市町村数が前回調査からほぼ横ばいだった結果について全建は、「各建協と支部の入会勧誘活動による成果が寄与している」との見解を示している。一方、不在となる懸念がある市町村が18件増加したことに対しては、「今後、災害対応空白地域が広がるリスクは増大傾向にある」と危機感をあらわにする。

地域建設業は厳しい経営環境にあるため、防災に対応することが困難な地域の増大が懸念されている(17年7月に発生した九州北部豪雨の赤谷川応急復旧工事)

 「現状は維持しているが、会員数、企業数ともに減少傾向にある」「南海トラフ地震が発生した際には、太平洋沿岸地域の会員企業に多大な影響が出ると考えられる」など、空白地域の拡大や災害発生時の支援体制を懸念する建協もある。また、「平成の大合併前の旧市町村で見ると、会員企業が不在になった地域がある。旧市町村の区分で見れば不在となる可能性のある地域も多い」という声も上がっている。
 調査結果は公共発注機関との地域懇談会・ブロック会議などで説明し、地域建設業が「担い手」としての役割を果たし続けることができる環境整備を訴える。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら