【相次ぐ文化施設整備】三鷹市で記念文学館整備に向け「太宰治 三鷹とともに-没後70年」展 7/16まで | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【相次ぐ文化施設整備】三鷹市で記念文学館整備に向け「太宰治 三鷹とともに-没後70年」展 7/16まで

 「一ばん永く住んでゐたのは、三鷹下連雀の家であらう」(『十五年間』より)--。いまなお多くのファンを持つ作家・太宰治(1909-48年)が晩年を過ごした東京都三鷹市で、2018年度特別展「太宰治 三鷹とともに-没後70年」(主催・三鷹市、市スポーツと文化財団)が開かれている。没後70年を迎えた太宰治とその創作の地である三鷹のまちにスポットを当て、『ヴィヨンの妻』『斜陽』『人間失格』など多くの作品を生み出した昭和を代表する文士の日常やその人物像に迫る。三鷹市では、太宰治記念文学館(仮称)の整備に向けた検討を進める中で市民の理解につながることも期待している。

太宰が愛用した二重廻しなども展示している

 文学館は、延べ約500㎡を想定。「文学の薫りの高いまち三鷹」まちづくりの一環として、移設・再現し公開する「吉村昭書斎(仮称)」(約30㎡)とともに「井の頭文学施設(仮称)」として、都立井の頭恩賜公園内に計画したものの、候補地以外で整備すべきとのパブリックコメントを尊重するとともに慎重に進めるべきとの市議会の意見も得て、清原慶子市長がことし3月に同公園以外に設置することを決めた。
 こうした背景の中で開催される特別展について、清原市長は「太宰治は、7年以上にわたり三鷹下連雀に住み多くの作品を生み出した。太宰が生きたまち三鷹の責任を果たすことができる」と紹介。また、「多くの市内外の皆さんからぜひ太宰治記念館を、吉村昭書斎をという声が届いている。特別展は、まさにそうした皆さんの期待に沿う展示となっている」と述べ、「いずれ恒常的にこのような展示ができる場所を整備するよう両施設の検討も継続して進めていく」との姿勢を示した。

あいさつする 清原三鷹市長

 市では、「三鷹市ゆかりの文学者顕彰事業検討会議」を5月に設置し、同展監修の安藤宏東大教授らが委員を務め、両施設の整備に向けた検討も進める。
 特別展では、1939年9月1日に転居した新築借家のあった「下連雀113」(現三鷹市下連雀2丁目)に焦点を当て、師友、弟子を始め多くの文化人と文芸談義に花を咲かせた日常も取り上げ、太宰の人生と太宰を支えた人々との交流を紹介しているのも特徴の1つ。
 自宅の書斎や、終戦後は駅前に仕事部屋を借りて多くの作品を執筆し、48年まで家族とともに三鷹で過ごした約7年半(疎開期間を除く)を中心に、自宅の表札、家族写真、はがきや手紙などから、愛用の二重廻し、万年筆、『斜陽』原稿などを展示している。また、兄の影響で幼いころから絵画やデザインなどにも関心が高く、自ら絵筆を執った知人の肖像画『久富君像』なども観ることができる。同展は三鷹市美術ギャラリーで、16日まで。観覧料は500円。

芥川龍之介、勝海舟、トキワ荘復元…都内で相次ぐ文化施設整備

 太宰治、吉村昭のほかにも、芥川龍之介、勝海舟……。東京都内で文化施設の整備計画が相次いでいる。「(仮称)芥川龍之介記念館」を計画している北区は施設建設に向けて、芥川が亡くなるまで居住した田端の旧居跡地を購入し、関連資料の展示や実物大の書斎の再現などを、学識経験者らによる検討委員会を中心に、2020年度まで検討する。23年度の開設を目指す。「芥川龍之介の名を冠し、単独で業績を顕彰する施設は日本で初となる」(同区)。
 大田区の「(仮称)勝海舟記念館」は、洗足池公園の東側に位置し12年3月に取得した国登録有形文化財、鳳凰閣(旧清明文庫)の土地と寄贈を受けた建造物を、文化財として保存・活用して整備する。勝海舟の歴史的功績と洗足池とのゆかり、時代背景を分かりやすく展示し、勝の思いを未来につなげる記念館で、旧晴明文庫を増築・改修する。実施設計は佐藤総合計画が担当し、藤木工務店の施工で、19年5月までの工期で進める。展示制作業務はトータルメディア開発研究所が担当している。
 こうした文化施設の整備は、まちづくりにつなげるのが特徴だ。豊島区でも南長崎地域でマンガによるまちづくりを進めている。区立南長崎花咲公園内に「トキワ荘」を復元し、「マンガの聖地としま」の発信拠点となるマンガ・アニメミュージアムとして整備する。建築設計と展示設計は丹青社が担当。今秋から建築工事に着手し、展示制作も開始する。東京五輪前の20年春オープンを目指す。

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