【18年7月豪雨】雨量400mm超えたところに被害集中 今後は監視体制の構築を 土砂災害専門家ら | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【18年7月豪雨】雨量400mm超えたところに被害集中 今後は監視体制の構築を 土砂災害専門家ら

 西日本豪雨で発生した土砂崩れに関して10日、土砂災害専門家(TEC-FORCE高度技術指導班)が広島県内の被災地を視察した。視察後の会見で、雨量が400mmを超えたところに災害発生個所が集中していることや土石流が河川の水に流されて下流に運ばれ、広範囲で土砂や洪水が氾濫した点、入り江が山に囲まれた海岸特有の地形が被害を大きくしたなどの特徴が報告された。
 TEC-FORCE高度技術指導班として現地視察したのは、桜井亘国土交通省技術政策総合研究所土砂災害研究部深層崩壊対策研究官と藤村直樹土木研究所土砂管理研究グループ主任研究員。

視察後に会見する専門家ら

 ヘリコプターによる発生源調査を実施するとともに、2次災害防止のための技術的助言を行った。
 視察後、中国地方整備局(広島合同庁舎2号館)で開かれた会見で桜井氏は、今回の災害の特徴について「明らかに雨量が400mmを超えたところに災害発生個所が集中していた。特に450mm、500mmに迫るところは、土石流や崩壊の密度が高い」との見解を示し、呉市の安浦町エリアでは山のいたる所が崩壊し、土石流となって下流に流れ出ている状況が確認できたという。
 激しい雨で河川の流量が多かったことも今回の災害の要因となったことも指摘し「通常なら土石流は谷の出口の扇状地に堆積しているが、そこから河川の水に流されて下流にまで土砂が運搬された」と下流の広範囲にまで氾濫している現象が見られたことや、入り江に面して三方が山に囲まれている坂町の小屋浦地区では「三方から土石流が発生している状況が見られ、海岸特有の地形が被害を大きくしたと考えられる」との認識を示した。
 また、河川で土石流が運ばれたケースとは別の土石流発生個所については「土砂災害防止法で定められている土砂災害警戒区域の氾濫範囲内に入っているところが多かったように思う」との見解を示したほか、土砂だけでなく流木が被害を拡大させたことなどの特徴を報告した。
 2次災害の危険性については「いまの段階では沢の上にたまっている土石流を押し流すほどの水量はない」との認識を示す一方で、今後、雨が降った場合に再び流出する危険性があることを指摘した。
 緊急に必要な対策についても言及し、「監視体制の構築が重要。特に被害の大きいところは監視カメラを設置するなどの措置が必要だし、たまった土砂の除去などによりさらなる氾濫を助長しないよう大型土のうを積んで流れる方向を規制するなどのハード対策も必要だ」と述べた。
 その上で「警戒区域で被害が出ていたことを踏まえると、自分たちが暮らすエリアでどれだけの自然災害のリスクがあるのかということをそれぞれが認識することが大切。例え今回被害がなかったエリアでも土砂災害警戒情報などを参考に避難するという心構えが災害を起こさない重要な点だと感じた」と警鐘を鳴らした。

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