【建築実測スケッチ】驚異の細密、フリーハンドの温もり 遠藤勝勧氏が初の展覧会「手の記憶」7/31まで | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【建築実測スケッチ】驚異の細密、フリーハンドの温もり 遠藤勝勧氏が初の展覧会「手の記憶」7/31まで

 その細密さに思わず「おおー」と声が出てしまう建築実測スケッチをフリーハンドで描き続けてきた建築家・遠藤勝勧氏の展覧会「手の記憶」が、東京・新橋のGallery TEN(ギャラリーてん)で始まった。原寸のスケッチ57枚が展示されている。

遠藤氏(右)と上曽氏

 遠藤氏は1955年に菊竹清訓建築設計事務所に最初の所員として入社。その菊竹氏から65年、米国シカゴに完成したマリナシティの実測に行ってこいと命令されて、ミース、サーリネン、ライト、カーンなどの著名建築もフリーハンドで実測スケッチした。その貴重な原本などをエピソードの文章とともに見ることができる。
 遠藤氏は、菊竹事務所に入社した当時、菊竹氏から指示されて東京中央郵便局、東京駅などを実測スケッチして提出したら「これは君が描いたんじゃないだろう」と期待以上の出来に驚かれたという。そして翌日から1週間ほど、2人で都内の建築を実測スケッチした。「ここはいい。ここはだめ」という菊竹氏の理由を聞いてその建築思想が伝わってきたと話す。
 寸法を記入した実測スケッチを描き続けることで、考えているデザインをフリーハンドのスケッチで原寸、縮小、拡大のどんなスケールでも描けるようになったと述べる。それは職人との意思伝達でも大いに役に立った。
 展示されている65年の訪米時のスケッチについて、「この時はおおらかな時代で建物に入るのは割と自由だった。ただ、入ってからカウンターや床をはいずり回って測り始めるので警備員に連行されたこともあった」と笑いながら話す。留学中だった建築家の香山壽夫氏に助けられたことなどエピソードは尽きない。

ギャラリー制作の22ページのブックレット。スケッチとともに、入所当時や65年訪米のエピソードも遠藤氏が執筆している

 Gallery TENは、オフィスビル管理会社のエフケイが運営する。同社専務で元建築雑誌の編集者だった上曽健一郎氏が、長く交流してきた遠藤氏に、ここでの展覧会開催を勧めた。ブックレットも制作し、スケッチとともにそれに対応する貴重な写真も納めた。
 ことし11月に84歳になるという遠藤氏の初めての実測スケッチ展覧会。フリーハンドの温もりも伝わってくる貴重なスケッチ展だ。7月31日まで。無料。午前10時-午後6時(土曜日は正午から。日曜休廊)。

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