【展覧会】"生きる場所を豊かにデザイン"日建設計が受け継ぐ野口孫市の哲学 3/31まで、無料 | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【展覧会】“生きる場所を豊かにデザイン”日建設計が受け継ぐ野口孫市の哲学 3/31まで、無料

講演会場には当日限定でスケッチや ドローイングなど貴重な直筆資料も

 日建設計は、東京都千代田区の東京本社で「野口孫市の建築術」展を開催している。14日には講演会も開き、同社の前身である住友本店臨時建築部の初代建築技師長として明治後期の大阪で活躍した建築家・野口孫市の実像に迫った。
 野口は明治建築界の重鎮、辰野金吾のもとで建築を学び、逓信省勤務を経て1900(明治33)年、住友本店臨時建築部の発足とともに建築技師長に就いた。47歳で亡くなり、その建築家人生は実働19年と短いながら、大阪府立中之島図書館や住友家須磨別邸、住友活機園(旧・伊庭貞剛邸)などの名作を残した。

講演する林和久氏

 「野口孫市 7つの建築術」と題した講演会では、同社OBの林和久氏が、その生い立ちや時代背景などもひも解きながら、野口の建築家としての特性や力量を解説。特に辰野ら明治の第1世代の建築家が「ものとしての建築」を直接的に移入していたのに対し、第2世代に当たる野口は「様式的な規範にとらわれず、その建築がどうあるべきかを多角的に考え、建築の本流と言える手法でもって本質的な型から組み立て直していった」とし、「後年のモダニズムの息吹さえ漂う」と評価した。
 その「自然(じねん)」ともいうべき設計姿勢の基本には「人々が生きる場としての空間の経験や意味を、建築として豊かにデザインすること」があったと指摘。「大事なことは建築術そのものではなく背景にある哲学。現在の日建設計の仕事の背景にも野口と同じ哲学が脈々と流れている」と締めくくった。
 講演会場には、住友史料館所蔵のスケッチやドローイングなどの貴重な直筆資料も当日限定で展示され、その精緻なデッサンに参加者からは感嘆の声も上がっていた。
 ほぼ同時期に設計、建設が進められた中之島図書館と須磨別邸に焦点を当てた展覧会は東京オフィス1階サブギャラリーで31日まで。無料。

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