【立体庭園に9割が高評価】バイオフィリックデザイン効果を調査/日建設計 | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

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【立体庭園に9割が高評価】バイオフィリックデザイン効果を調査/日建設計

 日建設計は、同社設計の「JR熊本駅ビルプロジェクト」に導入したバイオフィリックデザインの効果の調査結果をまとめた。主な効果として、来訪者の「体験価値の向上」や「滞在行動の喚起」「場所・建物全体の価値向上」の3点が確認できた。
 バイオフィリックデザインは建築や都市に自然を取り込み、利用者に対してポジティブな影響をもたらすことがコンセプトだ。日建設計は、世界中の都市で開発が加速する中、都市と自然の共生は健康で創造的な暮らしに不可欠な要素だと指摘している。

JR熊本駅ビル内観


 調査は、実際にバイオフィリックデザインを取り入れた同プロジェクトを対象に、建物内部の自然が人間に与える効果を可視化して具体的に評価することが狙いだ。
 同駅ビルには、生活の中で身近に自然を感じられる居場所を提供する目的で、熊本の阿蘇地方の自然と建築を融合させた「立体庭園」を創出した。熊本の名所である鍋ヶ滝をモチーフとした落差約10m、幅10mの滝も設け、滝の迫力と室内の心地良い音環境を両立したデザインとなっている。
 同社は駅ビル内の回遊行動を基に、立体庭園に訪れる人の割合や立体庭園が駅ビル内の回遊行動(滞在時間、来訪店舗数)に与える影響を調べた。また、立体庭園の各フロア(1階、3階、5階)のパブリック空間の魅力度と「緑」「水景」といった環境要素の魅力度も調査し、両者の関係を分析した。
 その結果、来場者の約3割が庭園を訪れ、庭園を経由した人の立ち寄り店舗数は1.5倍、駅ビル滞在時間が約1.4倍長くなるという傾向を示した。
 フロア別の空間魅力度については、各フロアの「居心地」「解放感」「落着き」「眺望」などの項目で約9割の人が高い魅力を感じていることが分かった。
 環境要素の魅力度はフロア別に特徴があるものの、「緑」が約9割、「水景」も1階、3階では約9割の人が「魅力度が高い」と回答した。「音」の調査を見ると、滝壺のある1階をはじめ、上層階のいずれのフロアも魅力度が高く、視覚・聴覚の両面で魅力的な空間を実現できた。
 このほかSNS(ソーシャル・ネットワークング・サービス)上の投稿データの分析からは、バイオフィリックデザインの総合的効果として、来訪者に「新しさ」「美しさ」「快適さ」などのさまざまな感覚価値をもたらしている状況がうかがえるとしている。



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