【経済性など定量化】日本住宅木材技術センターと木構造振興 建物内装木質化の効果を実証 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【経済性など定量化】日本住宅木材技術センターと木構造振興 建物内装木質化の効果を実証

 壁やテーブルなど内装に木を使うと、店舗の売り上げや働く人の生産性がどの程度上がるか――。こうしたデータを求め、日本住宅・木材技術センターと木構造振興は17日、「令和元・2年度林野庁補助事業内装木質化等の効果実証作業成果報告会」を開いた。同会では研究者と事業者が連携した13テーマの調査が報告された。店舗空間などでの効果を扱ったテーマの発表は5者、オフィス効果が4者、さらに、さまざまな木質化内装材の効果を扱った4者がそれぞれ発表し、木材から得られる効果を明らかにした。

カフェの内装木質化の効果を調査(7gardenの事例)


 この報告の意義は、定量的なデータや多様な内装材を検討した点にある。杉山真樹森林研究・整備機構森林総合研究所木材研究部門木材加工・特性研究領域チーム長は、「生産性は定量的な評価手段が確立されていないが、『内田クレペリン精神検査』やマインドマップなどを活用し定量化に挑んだ調査を高く評価したい。経済面でもPOSデータやビデオ解析を使ったカフェの来客数、滞在時間、売り上げ、客単価の比較など、施設側の協力があって、施主への説得力があるデータが集まった」とする。加えて「内装をすべて木質化するだけでなく、端材を活用した木の内装など、内装木質化のスタートとして取り入れやすい内装材の効果も検討したことが重要だ」と、木質化の普及に大きな一歩となるとの考えを示した。

 人によって効果にばらつきが出たことを不安視する指摘もあったが、恒次祐子東大大学院農学生命科学研究科准教授は、今後の調査で重要な点として、木質化で狙う効果の明確化や、木のどの要素が効果をもたらしたかのさらなる検討、効果のばらつきを受け入れる必要性を指摘し、「人間はばらついているのが真の姿なので、効果もばらつく。例えば、木材の血圧を下げる効果が一部の人にしか出なかったとしても意義がある」と強調した。

 有馬孝禮東大名誉教授は「木質化が人に与える効果は、研究者の間では既に説明がついていたが、実務では本当にそうだろうか、という点がある程度は確認できた。長い期間のデータが集まれば、投資対効果がより図りやすくなる」と定量化の意義を総括した。

木の端材を粉末にした塗り壁材の効果を検証(ヤマガタヤ産業の事例)

■テーマと発表者

店舗など来客を迎える空間での効果
 ▽カフェ店舗の内装木質化による経済的効果等の実証=前田啓東大大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻木材物理学研究室助教▽下町浅草発! 4者連携コンソーシアムによる内装木質化効果実証=平川喬7garden事業開発部長▽コンビニ、コーヒーショップ等店舗への杉木口スリット材導入に関わる実証事業=川井秀一大阪府木材連合会特別顧問・京大名誉教授・京大生存圏研究所特任教授▽内装木質が小児患者等に及ぼす効果=佐藤守福島県木材協同組合連合会所属▽金融機関店舗の木質化による来客・従業員評価の実証と新たな木質デザイン空間の実装効果=佐藤泰名古屋市立大学大学院芸術工学研究科建築都市領域講師。

オフィス関連
 ▽オフィスにおける新たな構造を有する木製家具の「効能」検証事業=小島勇イトーキ商品開発本部第1プロダクトマネジメント部所属▽木ダボ積層材DLTを用いた内装木質化の効果実証=鈴木康史長谷萬開発本部本部長兼商品開発部長▽オフィスの木質化における高齢層労働の生産性向上の実証について=上河潔森林・自然環境技術教育研究センター事務局長▽地域材による小規模オフィスと現場事務所の内装木質化の効果の実証=寺河未帆一場木工所代表取締役。

さまざまな木質化内装材
 ▽100年杉の効果の実証=畦地秀行畦地製材所代表▽新たな乾燥方法によるスギ内装材の心理効果の実証=網田克明徳島県木材協同組合連合会専務理事▽簡易木質化キットの効果実証と木材需要の創出=坂口大史日本福祉大学健康科学部福祉工学科建築バリアフリーデザイン専修所属▽木の塗り壁Mokkunに利用される未利用木質資源の香気による生体及び居住環境改善への効果の実証=鷲見亜希子ヤマガタヤ産業戦略企画室係長。



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