【IoT構造物ヘルスモニタリングシステム】安価なセンサーで"面的"に24時間365日リアルタイムで変化を計測! | 建設通信新聞Digital

5月21日 火曜日

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【IoT構造物ヘルスモニタリングシステム】安価なセンサーで“面的”に24時間365日リアルタイムで変化を計測!

 IoT(モノのインターネット)技術開発のmtes Neural Networks(東京都中央区、原田隆朗社長CEO)は、建物の固有振動を測定し、その振動数の変化をもとに構造物内部のゆがみや劣化を高精度・低コストで検知する『IoT構造物ヘルスモニタリングシステム』を開発した。これまで構造物の安全性を確認するには定期検査くらいしかない中で、安価なセンサーユニットを“面的”に多数使うことで、24時間365日にわたり構造物の変化をリアルタイムでモニタリングできるシステムとして期待される。既に2017年末から鉄道会社とともに、鉄道高架橋や駅舎の地震観測などに着手。原田CEOは「今後は全国展開、実用化を見据え、できるだけ多く(センサーを)配置したい」とさらなる意欲を示す。

老朽化リスクや異常をいち早く発見する

 同システムは、センサーで直接計測・解析した信号をゲートウェーに無線伝送し、ゲートウェーから携帯電話網を経由してクラウドシステムに蓄積、地震など緊急時の異常を速やかに伝える。

センサー外観

 これまで、構造ヘルスモニタリングに活用する低周波の振動を計測できるのはサーボ式加速度センサーが主だった。サーボ式は精度が高いものの高価な上、データをコンピューターに送る手法として使われていたのはケーブルを接続する有線通信だ。システム全体で高額な費用が必要になり、「限られた場所にしか設置できない、まさに“点”での配置だった」(原田CEO)。
 そこで同社は、半導体技術を応用した3軸MEMS加速度センサーに着目。最近ではどのスマートフォンにも搭載され、大量生産が可能で安価となり、ネックとなっていたコスト面の課題を克服。1つの構造物に多数のセンサーユニットを設置しても、システム全体の設置費用はこれまでの20分の1程度に抑えられるという。まさに「センサーを“面”でばらまけるようにした」と原田CEOは表現する。
 一方で、構造ヘルスモニタリングは精密な測定が肝となる。サーボ式加速度センサーと比較すると、MEMS加速度センサーの一つひとつのノイズ幅は大きく、製品によって測定値のばらつきが大きい。この弱点を補うべく、2つのMEMS加速度センサーを近接配置して測定するなどあらゆる工夫を凝らし、0.0001度という微細な傾きまで検知できるようにしたという。

近接配置された3軸加速度センサー

 加えて、このセンサーユニットに、数㎞程度のエリアであれば小規模の電力で安定して測定データを送るLoRa Private通信モジュールを組み合わせたことも特徴だ。LoRa Privateは専用のゲートウェーを設置することで、複数のセンサーユニットから固有振動の計測データを受け取り、3GやLTEなどの既存の通信手段を活用してインターネット上のクラウドサーバーに送ることができる。ゲートウェー内の通信には基本的に料金が発生しない上、それぞれの機器の消費電力は小さく、ランニングコストを抑えるメリットがある。
 IoTの国内市場規模は17年の約4850億円から20年には1兆3800億円へ、世界市場は16年の194兆円から30年には404兆4000億円に成長するとみられている。原田CEOは「老朽化した社会インフラとうまく付き合わなければならない時代に、IoT技術を駆使したメンテナンスは合理的であり、需要はますます高まる」とし、同社の構造ヘルスモニタリングシステムを「鉄道以外の構造物に転用する」ことにも自信をのぞかせる。
 同社はこうした構造物ヘルスマネジメントの分野で、足元の18年度に25億円、20年度には126億円の売上高を目指す。

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