さらに「地域をさまざまな角度から診断し、等高線などの自然に合わせてサイトをデザインした」というエコロジカルプランニング(地域環境管理計画手法)を紹介。森とのコミュニケーションを図る同校ならではの教育プログラムを解説しつつ「自然の力や命の大切さ、地域の絆を学んでほしい」と訴えた。
風見氏がコーディネーターを務めたシンポジウムには、工藤昌明同市教育長、設計を担当した盛総合設計+シーラカンスK&Hの工藤氏、アファンの森財団の活動を通じて同市の震災復興を支援している作家のC・W・ニコル氏が登壇した。
多くの学校建築設計を手掛けてきた工藤氏は「設計中も造成で敷地が変化したため、パズルを解くように建物を配置した」と、高台移転の造成と同時進行だった事業の難しさを強調。市内にある航空自衛隊松島基地の騒音対策について「さまざまな防音・吸音装置を使うことで木造校舎の遮音を実現できた」と振り返った。その上で「一人ひとりが好きな場所を見つけられるような仕掛けを施した。児童に加えて先生たちも笑顔になり、森の学校が希望を届ける象徴になってほしい」と語った。
一方、工藤教育長は「入学以来、仮設校舎しか知らなかった6年生たちが3学期だけでも新たな校舎で学べた」と、工事関係者と学校統合の1年前倒しに尽力した関係者に謝意を述べた。その上で地域と協働するコミュニティースクールづくりに向けて「地元の人たちに積極的に参加してもらえるシステムをつくりたい」と、森の学校が生み出す新たな社会像の実現を誓った。
復興の森や森の学校づくりなどに尽くしてきたニコル氏は「森にはいやしの力がある。日本の教育の歴史を変える学校だという自信がある。地域の文化と自然を学びながら、地元の人間だと誇りを持ってほしい」と、引き続き復興に協力していくことを約束した。