設計はプロポーザルで選ばれたシーラカンスアンドアソシエイツが担当。海抜20m以上の高台への整備が求められ、当初の試算では約54万m3もの切土量が想定されていたのに対し、段状に切土することで造成量を約18万m3まで低減し、山並みの改変を最小限に抑えることを提案した。
校舎棟は、海抜18mの「階段棟」と海抜26mの「ブリッジ棟」、これらをつなぐ「大階段」で大きく構成。階段棟は小学校と児童館、ブリッジ棟には中学校と体育館などが入る。階段棟をはさんで左右にグラウンドと幼稚園、プールなどを置き、山すそに沿って広がり、街に開かれた配置としている。
ブリッジ棟は、既存の山の風景を継承するよう最小限の切土で造られた盤上に、沢を架け渡すように設置。オープンスペースを活用して多様な学習形態に対応できる教室ゾーンなど、明るく伸びやかな空間は、子どもたちの生きいきとしたアクティビティーを誘発する。内覧会では早速子どもたちの歓声が響いていた。
学校側からは復興していく街の風景が、さらにその先には湾の景色が広がり、学校での子どもたちの元気な姿が街の人々に活力と希望を与える。地域活動の拠点ともなり、災害時の避難所機能も備えた複合施設は、津波で壊滅的な被害を受けたこの地区の再生のまさに主軸となるものだ。
施設は、校舎棟がS造4階建て、幼稚園棟は木造平屋建て、屋外体育倉庫がRC造、プール棟がRC一部木造で総延べ1万1142㎡規模。施工は大林組・熊谷組・東洋建設・元持JV。