大阪のビジネス街・中之島にある中之島三井ビルディングが、竣工以来初となる大規模リニューアルを実施した。入居テナントのオフィスワーカー同士の「つながり」を促進、またさまざまなアイデアやイノベーションが生まれることを期待し4階にある食堂スペースの大胆な刷新が行われたほか、1階と2階の共用部分にも働く環境を付加した。事業主の三井不動産によると、オフィスビル内にこれだけの規模のコミュニティースペースやコワーキングスペースを設置するのは関西圏では初めてという。
◆存在感の向上狙う
2002年8月に竣工した同ビル(大阪市北区中之島3-3-3)は「最先端のIT対応を実現する関西地区の旗艦ビル」と位置付けられ、着工時国内最高の容積率1450%指定を受けた。規模はS・SRC造地下2階地上31階建て塔屋1層延べ7万1269㎡。設計はシーザーペリアンドアソシエイツ(デザインアーキテクト)と日建設計、施工は鹿島・三井建設(現三井住友建設)・東レ建設・日東みらい建設(現みらい建設工業)・藤木工務店JVが担当した。
竣工時は大阪で有数のテナントビルだったが、完成から17年が経過した現在、周辺には関電ビルディング(04年完成)や中之島ダイビル(09年)、ダイビル本館(13年)、中之島フェスティバルタワー(12年)、中之島フェスティバルタワーウエスト(17年)といった高層ビルが建ち並ぶ。また13年に大阪駅前に誕生した「グランフロント大阪」など、ここ10年で大阪都心に最新の設備や機能を備えたオフィスビルが急増したこともあり、同ビルの存在感が薄れてきたことへの危機感があったとリニューアルの背景を説明する。
◆つながりを創出
そこで、「食事の時間を有効に活用することが日々のワークスタイルを豊かにする」(三井不動産)と、食堂を核としたリニューアルの検討が始まった。ビルテナントのオフィスワーカーを対象としたワークショップも開催、ユーザーニーズの取り込みも図った。
リニューアルのコンセプトは「つながる」。飲食機能の充実と多様な働き方をサポートする場を1つの空間に混ぜ合わせ、豊かなワークスタイルの実現と新しいオフィスビルの姿を目指した。プロジェクトを担当した関西支社事業2部の山下寛事業グループ長は「人と会わなくて仕事ができる時代であっても、人と人がつながる何かが必要だ」と話す。
◆食べながら打ち合わせ
4階の食堂はユニークなダイニングスペースとして生まれ変わった。CUIMOTTE(クイモッテ)と名付けられ、2日にオープンした。席数は440席。昼食だけでなくモーニングサービス、夜はディナーやバーとして利用できるカフェ&バーも備え、短時間の打ち合わせやアフター5の「ちょい呑み」にも対応する。
◆AI活用し実証実験
1階と2階の共用部にも会議室やワーキングスペースが設けられたほか、専属の「コンシェルジュ」を配置。イベントや会議室の予約、オフィスワーカー同士のビジネスマッチングや同じ趣味をもつ仲間同士をつなぐサポート役を果たす。またAI(人工知能)を活用して食堂の利用者数や滞在時間を解析、食事やワークスペースにレイアウトの最適化などにつなげるといった実証実験の場にもなるという。
リニューアルプロジェクトのデザイン監修と設計施工は三井デザインテックが担当。元設計・元施工の日建設計と鹿島も設備関連の設計や施工に協力した。同ビルでは今後も全館セキュリティーシステムの更新やテナント専用部のLED照明化なども実施する。