【記者座談会】建設キャリアアップシステム活用へ自治体に動き | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【記者座談会】建設キャリアアップシステム活用へ自治体に動き

A 建設キャリアアップシステムの活用・定着に向けた動きが自治体にも広がってきたようだね。
B 福岡県が県内の建設企業を対象に2020年度申請分の入札参加資格申請で、同システム活用企業にインセンティブ(優遇措置)を付与する。地域貢献活動評価項目で評価するもので、客観点数5点を加点する。山梨県は企業にとって最も直接的なインセンティブとなる総合評価落札方式の加点を全国に先駆けて決めた。10月1日以降に公告する土木一式工事でシステムの登録事業者に2点加点する。長野県でも導入に向けた検討が進められている。
A 地域建設業の感触はどうか。
C 建設キャリアアップシステムに限らないが、地域の建設会社の社長は工事の受注や利益に直結する話でなければ関心を示さない。技術者や技能者の確保が難しい状況は、地域建設業も同じなのに、「法律で義務化されるか、総合評価で加点されなければ、やらない」という会社が多いのは、そういう理由だ。だから、今回の山梨県の動きに対しては地域の建設会社は敏感に反応している。同様の動きが他県でも広がり、直轄工事で加点が始まれば、地域建設業も一気に動き出すだろう。
D 山梨県が打ち出した対応の最大の特徴は、システム加入メリットを企業に長く感じてもらうために2段構えにしたことだ。受注の有無に直結するため今後、登録企業数が一気に増加した場合、登録のインセンティブは続かないことになる。登録メリットを続けるために、技能者登録を次の加点・インセンティブ候補として控えさせたわけだ。

山梨県は、山梨県建設産業団体連合会と東日本建設業保証が9月25日に開いた2019年度建設業経営者研修会で、建設キャリアアップシステム加入へのインセンティブ付与の枠組みを説明。事業者登録を早急に進めるよう要請した

直用部隊評価も困難な担い手確保

B 制度の本質論からすれば疑問もあるけど、現実的な視点から見れば、非常に奥が深い。そもそも地方の建設業界では、すべての元請けが施工管理に特化しているわけではない。一部職種については直用の施工部門を持っているケースも多い。一方で施工部隊を持たず施工管理以外は外注する企業も同じ競争環境のなかで混在している。技能者登録が受注可否を握る評価となれば、すべてを外注する元請けは受注競争で勝てないことになる。
C 確かにそうだね。すでに山梨県以外の自治体でも、これまで資機材や技能者など実際の施工に必要なモノを持っているがゆえに、企業評価などで不利益になっていることを是正しようという動きは出始めている。ただ他県の例ではそうした動きに合わせるように、直用部隊を持とうと取り組み始めたけれども、担い手確保の難しさに直面しているケースも多いようだ。
A システムへの登録促進に向けては業界側でも日本建設業連合会が先導的に動いているね。
E 山内隆司会長が国土交通相の前で、他の建設業団体に対して同システムの登録を促したことに代表されるように、現在のスピード感を危ぐしている。9月25日に開かれた理事会終了後の会見でも業界内に「温度差がある」ことを認めた上で、業界全体の登録意識と取り組みへの足並みがそろうまで「システムの必要性を関係者に訴え続ける」と話していた。
D 「もはやシステム自体の周知・徹底を進める段階ではない」と厳しい言葉も聞かれた。宮本洋一副会長も日建連会員企業以外の登録数が加速度的に増えていかなければ、運用から5年をめどとする全技能者の登録は難しいとみている。20年度の国土交通省各地方整備局などとの意見交換会で、自治体に対してシステムの重要性と目的を改めて説明する考えを示している。
E 直轄工事で技能者登録の義務化を求める動きもあるけど、発注者と受注者だけでなく、受注者間の認識共有、連携が不可欠だと強く感じる。

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