【記者座談会】コロナワクチン職域接種の申請始まる/投資家への対応にゼネコンが苦慮 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

公式ブログ

【記者座談会】コロナワクチン職域接種の申請始まる/投資家への対応にゼネコンが苦慮

 企業や大学などが新型コロナウイルスワクチンを接種する職域接種が21日から始まる。建設業も関係することだ。

 1000人以上の企業は専属の産業医を雇っており、企業が場所や医師・看護師などを用意すれば、ワクチンを社員などに接種しても良いという仕組みで、政府は建設業にも職域接種の意思を確認するアンケートを実施している。大手ディベロッパーなども既に実施を発表したし、建設業でも大成建設が実施を表明するなど大手ゼネコンを中心に準備を始めている。ただ、場所の確保や打ち手となる医師と看護師、ワクチン保管用の冷凍庫の確保のほか、支店や現場の社員、協力会社作業員の接種方法など、考えるべきことがたくさんあって一筋縄ではいかないようだ。特に医師と看護師のセットは、産業医も地域のワクチン接種にかり出されており、通常の診療もしなければならないため、なかなか難しいようだ。

 ある準大手ゼネコンは、「本社の社員だけでは、家族も含めても300人くらい。1000人に届かなくても申請はできるが、ワクチンの提供が後回しになるそうだ」と悩んでいた。だから、日本埋立浚渫協会は、準備が整えられる企業の会場を使って複数の企業が共同で接種できるよう支援する方針で、ほかの団体でも検討が進むかもしれない。

 経済産業省と厚生労働省から、中小企業にもワクチン接種のニーズアンケートが届いているようだけど、それに回答すればワクチンを提供してもらえるという誤解も広がっている。今回のアンケートはあくまで意向調査であって、ワクチン提供が約束されるわけではないので注意が必要だ。

 いずれにしてもワクチン接種が広がれば経済活動の正常化につながる。乗り越えるべき課題は多いようだが、“民”の力で難局を乗り切りたいところだ。

都内の高齢者向け大規模接種会場。職域の接種が進めば、高齢者の接種も増えるという心理的な相乗効果が起きることへの期待が高まる

◆資本政策見つめ直すきっかけに

  

 前回も話題にしたけれど、一部投資ファンドがゼネコン株を取得する動きが、ここ1、2年で活発になっている。

 そういう投資ファンドが株主となったゼネコンは、さまざまな要求をされて対応に苦慮している。要求内容は、企業価値の向上を目的に、資産の売却や政策保有株の売却、配当の引き上げなどを求められることが多い。主要ゼネコンでは、こうした投資ファンドが株主となった企業は、やはり配当性向が高くなっている。

 狙われる企業の傾向としては、資産や現金、特殊な技術を保有していることが多い気がする。“余剰資産”を売却して株主に還元するよう求められる。

 東京証券取引所の市場区分見直しでは、プライム市場に上場するために「政策保有株」という企業同士の持ち合い株を減らし、株式の流動性を高める必要がある。コーポレートガバナンスの面で、株式の流動性向上は世界的な潮流だ。投資ファンドも流動性の低い政策保有株をはき出して売買しやすくするよう迫ることが多い。一方で、ある大手ディベロッパーは自社の株の持ち合いを増やすようゼネコンに求めているようで、板挟みになっているゼネコンもいるみたいだ。流動性を高め、個人株主を増やそうと思って転換社債(CB)を発行した結果、投資ファンドに買われてしまうというケースも考えられなくはない。

 “やっかいな存在”と考えがちだけど、ある準大手ゼネコンの社長は「昔はゼネコン株なんて誰も見向きもしなかった。それが投資ファンドから注目されるようになったということは、建設業が注目産業になってきたという証ではないか」と言っていた。近年の投資ファンドの活動が、結果的にゼネコンが資本政策を改めて見つめ直すきっかけになっている側面もあり、あながち悪いことばかりではない。



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら