【BIMで生産設備設計】トヨタのモノづくりを支えるデジタル技術 活用の鍵は"ゲーム感覚" | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【BIMで生産設備設計】トヨタのモノづくりを支えるデジタル技術 活用の鍵は“ゲーム感覚”

 デジタル技術でトヨタのモノづくりに貢献するトヨタプロダクションエンジニアリング(TPEC、福岡県宗像市、馬場章友社長)は、より安全で高品質・高効率な生産ライン・生産工程の追求を通し、もっと良いクルマづくりの実現に向けさまざまな取り組みを展開している。近年、レッドスタックジャパンの建設分野向けソリューションであるBIMプラットフォーム「FUZOR(フゾー)」を導入し、アバター型レビューツールとして、工程設計、生産ラインの機能・品質確認、安全性確保などに威力を発揮している。「BIMファクトリー」をけん引するTPECの取り組みを、素形材エンジニアリング部SE開発生技室DE開発推進Gグループマネージャーの矢立陽一氏(兼務IoT室)と同部主査の佐々木悠氏に聞いた。 

左:矢立グループマネージャー 右:佐々木主査


 TPECは、トヨタ自動車をはじめ国内・海外のトヨタグループ各社をデジタル技術による生産ラインの円滑な立ち上げを支援している。
 「デジタル技術の活用の第一歩は2Dのものを3D化することや、手書きの図表などをデジタル化することにある」(矢立グループマネージャー)。
 各種図面など2Dのものを効率的に3D化し、データを基軸とすることでより高度な検討ができるようにし、生産設備の検討、生産準備業務段階で威力を発揮する。

◆FUZORで不満解消

 「工程設計段階では、フゾーで実現したアバター型レビューツールの活用により、CADが使えない、サイズ感が分からないといった、ユーザーの不満解決に役立てている」という。
 市販の5000円程度のゲーム機用のコントローラーをノートパソコンにつなぎ、3D化された仮想工場の中を、アバターを文字通りバーチャルゲーム感覚で自在に動かすことにより、動線確認や配線、配管、各種スイッチの配置が迅速に確認でき、不具合を見つけ次第、修正できる。また、従来のCADでは、立ち上げてオープンし作業に入るまで15分近く要していたのに比べて、2分ほどで作業に入ることができる。さらに、よりリアルな立体画像で表現された仮想空間を、アバターが超高速でサクサク動く。
 1日の太陽の動きもデータ化し、作業構内への太陽光による日陰も表現。照度も的確に把握できる。アバターの人影も適宜、変化する。
 これにより、クライアントへの図面説明、事前面談などの大幅な時間短縮を実現した。

ゲーム用コントローラーを使うことで操作性が向上。ゲーム感覚で3D化された構内のアバターをスムーズに動かすことができる


◆軽く早くゲーム感覚

 この優れた操作性実現に大きな役割を果たしているのが、ゲーム用のコントローラーである。操作性向上に悩んでいた矢立グループマネージャーの悩みを解決したのは佐々木主査で、ゲームコントローラー導入を提唱した。
 「CAD操作には二の足を踏む人でも、立ち上げが楽でゲームコントローラーに慣れ親しんだ世代は、気軽にできる。軽さ、早さがポイント。もうレビューの際にCADが不要になった」(佐々木主査)。
 「コラボレーション機能を使うことにより、同時性を実現。アバターが同時に入ることができるので、海外や国内の他の地域からも計画段階の工場などに入り、同時に問題点の洗い出しや動線の確認などができる」のもポイントだ。
 また、フゾーを活用したVR(仮想現実)で、自分の視点で検討できるシステムも導入。しゃがんだり、手の届く範囲のイメージを的確に再現し、作業性の確認を容易にしている。
 一部クライアントの構内工事の安全研修などにも活用している。
 TPECは、3Dモデリング(データ基盤)作りの裾野を広めつつ、アバター型レビューツールをさらに改良し、関係者との情報共有化を緊密なものとし、将来的には、施設整備、生産ライン構築などの「現場合わせ」をなくすことを目指している。

アバター型レビューツールを活用した鋳鉄ライン 検討モデル(提供・アイシン高丘)

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