【BIM2021】青木あすなろ建設 ワンソフトでビジュアル向上、VR、4Dに対応 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIM2021】青木あすなろ建設 ワンソフトでビジュアル向上、VR、4Dに対応

 青木あすなろ建設は、施工BIMを推進する中核的ツールとして、創心アーキプラン(名古屋市)が提供するBIMビジュアライゼーション・シミュレーションソフト「FUZOR」を活用している。BIMを代表するRevitやArchicadで作成したモデルをFUZORの「ライブリンク機能」で統合し、それぞれのソフトの強みを生かした統合モデルを活用して建設現場の課題解決に役立てている。同社の現場支援におけるBIM活用法を聞いた。

RevitとArchicadを統合したライブリンク機能のイメージ


■レベルの高い機能を効率良く活用
 同社は2016年に施工部門にRevitを導入し、施工BIMによる作業所の支援を開始した。18年に「医療施設のVRモデルルーム」の構築について作業所から依頼を受けた際、ゲームエンジンによる高度なビジュアルとVRを実現できるFUZORの導入を決めた。16年からBIMを支援している村川昌広建設技術本部建築エンジニアリング部BIM推進グループ担当部長は「VRの機能が社内で評価された。ワンソフトで高品質のレンダリング、VR、4Dシミュレーション、リモート活用などが可能であり、いずれの機能も高いレベルで行うため効率良くBIMを活用できる」とメリットを実感する。

 その中で、最も重視しているのが、異なるソフトウェアで作成したモデルを統合するライブリンク機能だ。同社は、業務内容に応じてソフトを使い分けており、意匠・構造モデリングはRevit、仮設モデリングはArchicadのアドオンソフト「スマートコン・プランナー」を使用している。またTCGグループ内で協力してBIMに取り組む高松建設BIM推進室ではArchicadが主体になる。ライブリンク機能で、ソフトウェア固有の強みを一つのモデル上で発揮でき、BIMの支援を効率化する。

 作業所の支援は、「BIM支援依頼書」の提出を受けてから始まる。特に増えているのが現場の“見える化”の依頼だ。VRとプロジェクターを併用して3次元モデルを活用するとともに、ウォークスルー機能でモデル内を移動して確認や納まりを検証することができる。VR内で見つけた気になる場所は「静止画」を記録したり、「動画」を出力するなどして、その後の打ち合わせ資料として活用可能だ。「FUZORの視覚効果を外国人労働者へ作業手順の説明に活用した作業所もある。意思疎通に非常に効果がある」とメリットを挙げる。

■さまざまなデータの高度な利活用を実現
 また、高度な4Dシミュレーションを簡単に作成できるのもFUZORの特徴の1つだ。自身が工事部在籍時に使用していた工程表作成ソフト「Microsoft Project」とデータ連携でき、FUZORの時間タスクに工程表のCSVデータを取り込み、4Dモデルを作成することで、シミュレーションの支援依頼に迅速に対応できる。

 現在は、ゼンリンの「3D都市データ」などデータ連携を広げている。青木あすなろ建設が所属しているTCGグループの新社屋ビルの建設工事では、3D都市データと連携した設計施工一貫BIMを作成し、道路からビルに入り、上層階からの眺望などを3次元空間で再現することができる。さらに「Hololens2」を使用したMR、スマートデバイスによるARなどのXRに対応する。営業部門や設計部門など他部署からの依頼も増え、活動の幅も広がりをみせる。

TCGグループ新社屋ビルの建設では3D都市データと統合した


 今後のBIM標準化の試行として展開するのが、FUZORのコラボレーション機能だ。複数人が遠隔地からVR空間に同時に入り、現場の施工検討などをリアルタイムで行う機能だ。「移動を気にすることなく、多くの作業所を遠隔で支援できるため、生産性向上につながる」と期待を込める。

■ノウハウの蓄積が進む
 社内のBIM推進体制も強化されており、20年度に建設技術本部の下部組織にBIM推進グループを設置し、現在6人の社員がBIMの支援業務に従事している。「現場が求める内容も広がり、さまざまな課題解決や手戻り防止に取り組んでいる。BIMを現場に納品するとすぐに効果が表れるため、効果をフィードバックし、ノウハウを蓄積している」と説明する。

 今後も引き続き、東京と大阪の両本店管轄現場のBIM活用を支援する。「企画、設計、営業から施工へとつながる一貫したBIMワークフローを構築し、迅速にBIMモデルデータを提供することで生産性向上につなげたい」と見据える。



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