【潜水士の確保・育成へ】岩手県立種市高校海洋開発科の潜水士PRポスターが土木広報大賞優秀部門賞 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【潜水士の確保・育成へ】岩手県立種市高校海洋開発科の潜水士PRポスターが土木広報大賞優秀部門賞

 岩手県立種市高校の海洋開発科は、同町発祥のヘルメット式潜水「南部もぐり」の技能伝承と潜水士の確保・育成に向けて、さまざまな広報活動を展開している。その一環であるPRポスターはデザインの斬新さなどから、土木学会が主催する「土木広報大賞2019」の優秀部門賞(企画部門)を受賞、県内外に大きなインパクトを与えている。

種市高校ポスター

 同校海洋開発科は、海洋土木工事などのインフラ整備に不可欠な潜水士の育成を目的とする全国唯一の学科として、多くの潜水士を輩出してきた。ただ、少子化などを要因に近年は入学者数の定員割れが続いていることから、同科は地元自治体である洋野町(ひろのちょう)などの関係機関と連携し、2018年度から「南部もぐり養成応援プロジェクト」を開始。PRポスターは中核的企画で、ことし1月に完成した。
 実際の撮影は水深10mの潜水実習プールで実施した。おもりなどを含め総重量が約70㎏にも達する潜水服を着た生徒と、学生服を着た生徒が水中で机を並べて授業を受けるという日常と非日常を混在させることで、中学生を始めとする多くの人の印象に残りやすくするとともに、学校生活や潜水授業、卒業後の進路などをイメージしやすくしている。カメラマンは同科の教員が担当した。
 また、「ヒロノジンと学ぼう。」とのキャッチコピーは、洋野町をPRするために考案された言葉「ヒロノジン(洋野人)」を、南部もぐりの潜水士に重ね合わせ、町を象徴しているとの意味合いが込められている。
 PRポスターは3000枚を作成し、岩手(159校)、青森(162校)両県内の中学校のほか、OBの出身中学校、国土交通省、日本潜水協会、日本埋立浚渫協会、近くの水族館、公共施設などに配布している。
 18日に東京都新宿区の土木学会で開かれた表彰式では、同科の代表者がプレゼンテーションを実施した。大向光実習教諭は「日本全国にいる約3300人の職業潜水士の3分の1が本科OBだが、高齢化による潜水士の減少、東日本大震災を契機とした防波堤整備工事などの急増に伴う潜水士不足が顕在化し、後継者の育成が急務となっている」とし、広報活動を通じた担い手対策の重要性を訴えた。

プレゼンする種市高校海洋開発科の関係者

 撮影当時3年生で、モデルを務めた大崎幸成さんと十文字聖也さんは、低水温かつ長時間の水中作業のため過酷な撮影環境だったが、関係者が一丸となった作品づくりにやりがいを感じたと伝えた。2人とも4月に就職、潜水士として活躍している。
 1年生で、潜水士見習いの澤山翔さんは「父が港湾工事の潜水士なので、父のような潜水士になれるように一生懸命努力したい」と決意を述べた。

表彰状を受けとる澤山翔さん

 選考委員会は「強烈なインパクトで、記憶に残るポスターとキャッチコピー」とし、「潜水士が国民生活を支えていることが再認識できた。若い世代の活躍に期待している」と評している。
 PRポスターは岩手県広告協会が主催する「第50回岩手広告賞」でも全体2位に輝いており、「そこでしか作れないポスター。唯一無二のものは訴える力が強い」などと講評されている。
 種市高校は洋野町、岩手県、日本埋立浚渫協会東北支部、日本潜水協会、東北地方整備局港湾空港部と「海洋土木技術の持続的発展と担い手の確保・育成にかかる包括的連携・協力に関する協定(6者協定)」を締結しており、産学官連携の下、南部もぐりの担い手育成や本校の存続に向けた各種取り組みを進めている。
 その成果として、南部もぐり養成応援プロジェクトの財源である「企業版ふるさと納税」の寄付額が増加し、PR活動などの事業拡大につながっている。
 また、日本潜水協会の寄付により学生寮を整備。遠方からの入学者受け入れにも力を入れている。

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