【事前防災の新たなシンボル】兵庫県・千苅ダムに新たな放水設備を設置 治水活用事業が起工 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【事前防災の新たなシンボル】兵庫県・千苅ダムに新たな放水設備を設置 治水活用事業が起工

 兵庫県が神戸市の利水ダム「千苅ダム」に新たな放流設備を設置して治水目的でも利用する「千苅ダム治水活用事業」が起工した。1日に現地で行われた起工式には井戸敏三兵庫県知事、久元喜造神戸市長、施工を担当する飛島建設の乘京正弘社長のほか、赤羽一嘉国土交通相も駆けつけ、工事の無事を祈念した。「武庫川水系羽束川千苅ダム治水活用施設整備工事」は飛島建設・豊国工業JVが担当する。

右から赤羽大臣、井戸知事、久元市長

 冒頭、井戸知事は「武庫川については河道対策や流域対策に取り組んでいるが、完了するまでに時間がかかる。早期に安全の向上を図るために千苅ダムの治水活用を検討し、神戸市に100万tの活用を認めてもらった。近年は狭い範囲に多量の雨が降るようになっており、地域ごとに治水対策が求められている。この事業は新しい事前防災のシンボルとなるものだと考えており、広大な武庫川の水位を5cm下げることができる。工事の無事故を願っている」とあいさつした。
 来賓からは赤羽国交相が「全国で20の被災地を視察したが、近年の気候変動などで災害が激甚化しており、ハード・ソフト一体の防災対策に取り組まねばならないことを実感している。兵庫県の先進的な取り組みと神戸市の協力によって、千苅ダムを治水にも有効活用するこの事業は大変時宜(じぎ)にかなっており、安全に貢献する有意義なものだ」と祝辞を述べた。
 松本元生神戸土木事務所長による事業概要説明、近隣住民によるコーラスの後、主な関係者と地元の子どもが鍬(くわ)入れ式を行い、着工の節目を祝った。
 千苅ダムは1919年に完成した直線型重力堰堤粗石モルタルダムで、堤高42.4m、堤頂長106.7m、堤体積4万1000m3で、貯水容量は1124万m3。有形文化財に登録されているほか、近代化産業遺産に認定されている。
 治水活用事業では、神戸市が管理する利水ダム「千苅ダム」に県が放流設備を設置し、貯水位を1m程度下げるとともに100万m3の空き容量を確保する。
 現在も6月から10月は本堤ゲートを全開して貯水位を常時満水位から1.5m低下させているが、同事業ではこのうち洪水期の7-9月について貯水位をさらに1m低下させる。
 これと合わせ、ダム貯水池の渇水時や水質悪化時に備えて、県営水道と接続している三田西宮連絡管と神戸市水道局との接続管を県が補償工事として整備し、利水に影響を及ぼさないよう配慮する。
 治水活用施設整備工事の概要は表層放流設備、底層放流設備、上流船着場設置、電気設備、通信制御設備(水質監視設備)各一式。工期は2022年3月25日まで。工事場所は神戸市北区道場町。
 設計は日本工営が担当。

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