【記者座談会】官民で週休2日制実現へ加速 中堅企業の不安払拭も重要 | 建設通信新聞Digital

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【記者座談会】官民で週休2日制実現へ加速 中堅企業の不安払拭も重要

政府の「働き方改革」推進の大号令のもと、建設現場も週休2日制実現へ大きくアクセルを踏み込んだ。直轄工事をエンジンに、地方自治体発注工事や民間工事にどこまで波及するのか、注目される


A 建設現場の週休2日制実現に向けた動きが官民ともに一段と加速している。
B 24日の閣議後会見で石井啓一国土交通相が、建設現場の週休2日制の実現を「直轄工事から率先して取り組む」考えを表明した。建設業界の働き方改革への取り組みを、省として強力に後押ししていく姿勢を改めて鮮明に打ち出した。
C 背景には、長時間労働の是正や時間外労働の削減といった政府が進める全産業的な働き方改革の推進圧力がある。もともと建設業は他産業に比べても休日が少ない。時間外労働ということ以前に、所定内労働の長さに大きな課題がある。そうした建設業界の特性からも、改革の軸として週休2日の実現が浮上してきた格好だ。
B 直轄工事での率先行動を打ち出すのは、発注者として、週休2日に取り組めるだけの推進ツールをそろえたことへの自負もあるだろう。代表的なものが、週休2日を前提にした工期設定支援システムの活用や、間接工事費の補正などだ。懸案となっている「十分な工期の確保」「休日が増加することによる企業のコストアップ」「日給制であることが多い労働者の収入減」といったそれぞれの課題に発注者としての対応策を打ち出すことで、受注者が実施に踏み切れるだけの環境を整えたという思いがある。
A 対する業界の動きだが、まず大手団体が即応した。
D 日本建設業連合会が27日の理事会で週休二日推進本部の設置を決めた。体制を固めて、とりわけ建設現場での週休2日実現に向けた本格的なスタートを切ることになる。本部は、会長交代後の目玉として新体制とともに4月から始動する。政府が推進する働き方改革の動きに合わせて、日建連としての本気度を示すという意味もある。
E 本部長を務める井上和幸清水建設社長は27日の理事会後会見で「これからの担い手確保・育成のために、週休2日は絶対に必要だ」と語気を強め、全力で取り組む構えを示した。一方で、工期の延伸に伴うコストアップや日給月給で働く技能者の収入をどう維持するかなど課題も山積している。
A 本部での具体的な検討スケジュールはどうなっているのかな。
D 2017年内をめどに中期週休二日実現行動計画の策定を目指す。27日の理事会では「いまから5年程度」での週休2日定着を総意として決議した。本部の下には、人事、調達、企画部門など各社の部長クラスで構成する幹事会を設置し、実務的な検討を進める。7月末をめどに課題を抽出し、9月には行動計画の骨子作成を見込んでいる。かなりタイトなスケジュールではあるね。
E 早急な具体策検討の背景には、政府が28日に策定した働き方改革実行計画で、建設事業に時間外労働の上限規制を適用するまでの猶予期間が、法改正後5年と明記されたことがある。政府は17年内に労働基準法改正案を国会に提出し、19年度にも上限規制を導入する考えを示している。日建連としては建設業への上限規制導入前に週休2日を定着させ、猶予期間内には法適合できるように業界一丸となって取り組む構えだ。
D ただ心配の声もある。直轄等級Bの中堅企業などが代表例だが、大手・準大手に追随したくても人材確保を含め週休2日にかじを切れないジレンマがある。中小建設業向けに発注ロットを大きくすることも考えられるが、そうなれば中堅企業はこれまで以上に受注環境が悪化するのではないかとの懸念もある。こうした不安を払拭(ふっしょく)していくことも環境整備と言えるのではないかな。