【部品設計から工場レイアウトまで】自動設計ソフト「ジェネレーティブデザイン」の実力 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【部品設計から工場レイアウトまで】自動設計ソフト「ジェネレーティブデザイン」の実力

 オートデスクの自動設計ソフト「ジェネレーティブデザイン」の活用がさまざまな分野に広がっている。航空機製造大手のエアバスは、航空機部品の設計・製造に活用したほか、自社工場の建築設計、レイアウト設計での活用も検討する。

エアバスの機体組立工場

 ジェネレーティブデザインは、一定の条件を設定すると条件の範囲で可能な無数の設計案を自動的に提示するソフトで、人間では考え出すことが難しい形状も比較検討できるため、建築設計事務所やゼネコンなどで活用が始まっている。
 エアバスでは、航空機用部品の開発に当たり、性能と安全性で基準を上回った上で、より軽量な部品を開発するためにジェネレーティブデザインを採用。2015年には、航空機の客室とギャレーを仕切る壁(バイオニックパーティション)と折りたたみ式補助椅子の次世代型支持構造の開発でジェネレーティブデザインの概念実証を初めて実施した。その結果、新しい設計アプローチで生み出した製品を航空機「A320」の在庫に展開すれば、年間50万tに及ぶCO2排出を削減できると予測した。これを踏まえ、プラスチック製のパーティション用3Dプリンターで型を作成し、合金で部品を鋳造するバイオニックパーティションのバージョン2の開発に着手した。従来品と同程度の強度と軽量性を確保した上で、低価格化を実現できる見込み。A320の垂直尾翼の前縁を含む、構造体の部品見直しにもジェネレーティブデザインを活用し、方向安定性を制御する垂直尾翼の左右方向の動きに起因する空気力学的な非効率性を低減する考え。
 さらに、航空機用部品の製造工程と製造空間を改善する際にもジェネレーティブデザインの活用を検討する。A350の翼の組立ラインでは、さまざまな工具が必要な上、世代によって異なる多様な翼形状にあわせて工具の場所と移動経路を配置しなければならない。ジェネレーティブデザインを使って、工程で発生する混雑や障害を最小限に抑える最適な工具の配置や移動経路を割り出し、新しい組立工場などの建設を予定する際に生かしたい考え。従業員の労働条件の改善や生産性の向上を達成できるとみられる。
 加えて、建築物の環境性能評価制度「LEED」の認定取得のためのレイアウト構築にもジェネレーティブデザインを採用する方向で検討する。

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