【警備業発!】"過渡期"のデジタル化を適度なアナログ感でなじみやすく 勤務管理システム「ShiftMAX」 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【警備業発!】“過渡期”のデジタル化を適度なアナログ感でなじみやすく 勤務管理システム「ShiftMAX」

ShiftMAXの特長

 高齢化や人材不足が深刻化する専門工事業は、経営効率化や人材確保に向けた会社組織の改善・強化が課題となっている。紙ベースの運用が根強い勤務管理の効率化で注目されているのが、建設業以上に平均年齢の高い警備業に定着したKYODOU(東京都新宿区)の勤務管理システム『ShiftMAX』だ。澤橋秀行社長は「使い慣れた適度なアナログ感とデジタル化による効率化の“ハイブリッド”が特徴だ。誰もが安心して参加し、作業効率を大幅に向上できる」と説明する。高齢化や勤務形態まで共通点の多い警備業から、専門工事業における勤務管理改善の可能性を探る。
 処遇改善の取り組みが官民あげて進められる専門工事業は、魅力ある産業を目指す上で、社会保険加入や職人の社員化など会社組織を改善・強化し、働き手の安全・安心を担保することが強く求められている。この際、業務効率化による従業員の負担軽減も重要な要素だ。

KYODOU社長・澤橋秀行氏

 勤務管理では、複数現場への職人の送り出しや応援の手配なども含め複雑な作業を紙ベースで行っているケースが多い。そのためデジタル化による勤務時間や給与管理の効率化の余地は少なくない。手作業による集計作業や転記の手間を効率化するだけでなく、例えばスマートフォンで場所を選ばずに出退勤時間を打刻することで、早朝に会社に集まらずに現場に直行し、時間短縮につなげることもできる。管理側も早出の負担が小さくなるなど、従来の働き方に幅を生み出すことができる。
 パソコンやスマートフォン、タブレットなどの普及により若手経営者を中心にITへの関心が高まるものの、職人や技術者の高齢化に配慮する必要もありデジタルへの移行は“過渡期”の状況だ。澤橋社長は「勤務システムの多機能化やスペックの向上は可能だが、警備業と同じくそれが導入に進む要素にはなりにくいだろう。この状況を打開するには情報リテラシーの低い人でも容易に扱える環境が必要だ。そこにわれわれが警備業で培ったノウハウを生かすことができる」と指摘する。

◆アナログ感で敷居を低く
 警備業では、現場の直行直帰が多く、夜勤や緊急出動などの複雑なシフト管理が必要だ。そのためタイムカードの打刻やICカード認証で出退勤管理するのが難しい。さらに警備員は建設業以上に高齢化が進んでいるため、スマートフォンの活用にもなじみにくい。「スペックの高いシステムを構築しても、それがユーザー拡大に直接つながらない」という課題を乗り越える必要があった。
 普及のポイントは“適度なアナログ感を残す”こと。「従来のツールを効果的に取り込み、できるだけユーザーが新しい操作を学ばなくても済むシステムを構築することでデジタル化の敷居を低くする」ことを重視した。その結果、『ShiftMAX』は警備業における勤務管理システムのスタンダードと言われるまで普及し、ALSOKなど大手警備会社を中心に幅広く採用されている。

◆一元管理で手間を削減

ShiftMAXの特長

 『ShiftMAX』はExcelとクラウドを直結し、勤務情報を一元化する。「新たなインターフェースのシステムを開発すると社内でうまく運用できるようになるまで時間がかかることもある。誰もが使いなれているExcelを採用するとともに、各企業の管理項目に合わせてアレンジして引き渡す」ことで管理の負担を軽減する。
 具体的には、シフトの作成、クラウドを活用した従業員の出退勤時刻のリアルタイム管理、帳票集計、勤務時間の自動集計などをExcelで一元管理する。作成した情報を給与管理システムにつなげることで、給与明細や年末調整の作成など経理も含めて作業を効率化できる。「これまでは作業が分断されていたため、その都度全従業員の勤務時間を転記したり、集計する手間があった。間違いの確認にも時間がかかる。そうした作業を大幅に効率化し、正確な勤務管理を可能にした」と説明する。

◆ワンクリックの簡単操作
 一方、各現場に出勤する従業員は携帯電話などのモバイル端末、ICカード、指静脈認証など多様な方法で出退勤時間を打刻する。打刻された時間情報はリアルタイムで管理者が確認することができる。
 スマートフォンなどのモバイル端末を使用した打刻では、高齢者も対応できるよう携帯サイトを使った簡単な自動受付システムを構築し、“ワンクリック”で出退勤報告が完了するよう操作を極限まで単純化した。クリックした勤務情報はクラウドを経由して即座に管理用Excelに反映される。
 さらに、慣れ親しんだ携帯電話をそのまま使用できるように、スマートフォンだけでなく従来の携帯電話(ガラケー)にも対応した。GPS(地理空間情報)で位置情報を取得し、打刻の正確な時間と場所を把握する機能も搭載している。

◆電話報告をシステム化
 携帯電話の操作になじめない高齢者のために開発した「通話打刻」サービスも好評だ。指定の番号に電話し、音声ガイダンスに沿って携帯電話のボタンを押すことで出退勤を記録することができる。警備業で根付いている電話報告をシステムにつなげたものでモバイル端末同様、クラウド経由で管理用Excelに勤務情報が送られる。「電話報告というアナログ手法をデジタル化することで高齢者でも違和感なく参加できるようになった」と効果を語る。
 その結果、「管理する側も電話対応する回数が大幅に少なくなり、その分の時間をより大切な業務に割けるようになった」と話す。業界から「警備業でも使える勤務管理システムができた」と評価を得てからの普及は早かった。

◆逆転の発想が普及の契機に
 他社からも多くの勤務管理システムが発売される中、“情報リテラシーの壁”を克服できたのも『デジタルからの脱却』という“逆転の発想”があったからだ。「警備業で10年間、勤務管理システムを開発してきたが、スペックの高度化ばかりにこだわっていたころは製品の売れ行きが良くなかった」と振り返る。
 新技術やスペックの高度化で他社と差別化を図ることに目が向きがちだが、「デジタル至上主義の流れから一度脱却し、適度なアナログ感を取り込むことに力を入れた」ことが契機となった。電話や紙が優先される50-60代でも使えるシステムに照準を定めたことで、「デジタルとアナログがハイブリッド化され高齢者が違和感なく管理システムに参加できるようになった。その結果、全員参加型でシステムを運用できる環境が整った」とし、“人”に合わせたシステム開発が大きな成果につながった。

◆建設業の働き方改革に貢献
 警備業と建設業の各業種の勤務管理に違いはあれど、『ShiftMAX』は業種や各社ごとの多様な勤務形態に対応し、アレンジできるため、昨年あたりから建設業からの引き合いが急速に増えている。社会保健加入、週休2日制の導入、生産性革命と、“働き方改革”など魅力ある産業の創出に向けて経営環境が大きな変革期を迎えたことで、各社はその対応を迫られている。
 「ワークフローを変えるには口頭で説明するよりもシステムに乗せることで進展するケースも多い。例えば自動受付システムが勤務管理の精度を高める」と指摘する。就業規則の制定など組織改善に取り組む専門工事会社が増える中、「勤務管理のシステム化を通じて建設業の組織改善も支援し、働き方改革に貢献したい」と力を込める。

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