【ノウハウ生かし業種拡大】特殊高所技術 会社立ち上げのきっかけになったスポーツとは? | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【ノウハウ生かし業種拡大】特殊高所技術 会社立ち上げのきっかけになったスポーツとは?

 『特殊高所技術』は、社名のとおり足場のない高所での点検業務を担っている。京都市に本社を置く同社は、これまで橋梁やダムなどの足場がない高所での点検業務が主軸だが、風力発電用の風車補修業務や海外協力にも携わるなど点検だけにとどまらない。和田聖司社長は「いまは橋梁が仕事の7割だ。しかし、風車の業務も増えており、補修も増やしていきたい」と力を込める。 同社を立ち上げるきっかけとなったのは地質調査業のアルバイトだったロッククライマーを見たことだという。崖に登り、地質の写真を撮影してもらうことがロッククライマーへの依頼で「このような仕事をほかに生かせないか」と考えていた。

和田聖司社長


 本州四国連絡高速道路会社の担当者からの提案もあり、橋梁の点検を担当する特殊高所技術を2007年6月に設立した。同年8月にアメリカのミネソタ州で発生したミネアポリスのミシシッピ川橋崩落のニュースを見て「何とかしなければならない」と感じたという。
 この事故を受け、高度経済成長期の建設ラッシュで建てられた構造物が供用から50年を迎える時期にあった日本でも危機感が一気に高まった。この時期から「道路の新設から長寿命化へトレンドが変化していったのではないか」と推測する。
 その後、阪神高速技術と技術協定を結んだほか、国土交通省四国地方整備局四国技術事務所が募集した新技術情報提供システム(NETIS)のテーマ「橋面上の交通規制を伴わず、安全に点検ができる橋梁点検足場技術」に選定されたことで同社の知名度は大きく向上した。

橋梁での作業風景


 ルーツはロッククライミングにあるものの、同社の技術とは大きく違う。その理由は「ロッククライミングは個人の技量に左右される部分が大きい」。誰もが安全に作業するために命綱を3本使い、常時2本以上はつなげるなど、万全の態勢を整えている。
 現在の業務の割合は、橋梁の点検が7割、風車の補修が2割、水力発電所の点検などその他が1割となっているが、点検業務にとどまらず詳細調査や補修、非破壊検査など業務は多岐にわたる。日本で発生する落雷は電荷が高く、ブレードの先端も空気抵抗により損傷することから風車の業務は補修需要が増えている。「風車以外でも、補修業務をもっと増やしたい」と意気込む。

 高所での作業と安全性を両立させた技術には海外からも注目が集まる。業務提携していた阪神高速グループとともにインフラの維持管理が課題となっているモロッコ高速道路会社(ADM)に対し特殊高所技術が持つノウハウを『Ninja-Tech』として技術移転する取り組みも進んでいる。
 さらに洋上風力発電への参入も狙う。自社の強みを生かし大規模洋上風力発電所の開発から維持管理まで携わる。国際的にも日本の洋上風力発電開発には注目が集まっている。

風車での作業風景


 一方、近年はi-Constructionの動きと連動してドローンによる危険個所の点検も動き出している。「さまざまな実証実験が行われているが、いまだ実装はされていない。ドローンにとって橋梁は構造が複雑すぎる」と語る。撮影したデータだけで分かる情報には限度がある。また、ドローンのみによる点検では内業量が増えるため、従来技術と比較して費用的なメリットが出しづらいという。
 しかし、ドローンを敵視しているわけではなく「ドローンは点検対象物との距離を自由自在に変えられることが強みだ。近接目視が必要な部分を抽出する1次点検には非常に役立つ」と期待する。
 ドローンメーカーとも連携しており、「今後はドローンと人間の欠点を補い合うことが重要だ」と説く。

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