【記者座談会】東京都の入札契約制度改革、全体最適を目指した議論を/告示15号見直し | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【記者座談会】東京都の入札契約制度改革、全体最適を目指した議論を/告示15号見直し

現行の入札契約制度を高価格体質と評した小池知事


A 東京都が入札契約制度改革の実施方針を明らかにしたね。
B 予定価格の事後公表(全案件)、JV結成義務の撤廃(全案件)、1者入札の中止(財務局契約案件)、低入札価格調査制度の適用拡大(財務局契約案件)の4つが柱で、6月から財務局契約案件を対象に試行を開始し、各局契約案件は10月をめどに試行する。これまで批判を受けても、かたくなに堅持してきた予定価格の事前公表を、試行とはいえ全案件で取りやめるのは歴史的な大改革といえる。
C 小池百合子知事は昨年8月の就任会見で「世の中を変えていくのは、よそ者、若者、ばか者」と言っていたが、今回の改革は、都にとっては“よそ者”の特別顧問を務める外部有識者の意向が強く働いている。
A ただ、現行の入札契約制度を財務局とともに構築してきた都議会自民党は、今回の改革内容に強く反発しているが。
B 都議会自民党の高木啓幹事長は「改悪」と断じ、4日には建設業界を中心とする13団体を対象にヒアリングを実施した。高木幹事長によると、ほぼすべての団体が改革内容に否定的で、なかには撤回を求める声もあったという。
C 重要なのは、公共事業の適正な執行であり、入札契約制度は手段に過ぎない。入札契約制度のあり方のみを議論しても部分最適になるだけで、例えば、1者入札の中止によって事業の執行が遅れれば意味がなく、全体最適を目指した議論、取り組みが求められている。
D 都議会自民党は、特別顧問と業界団体との意見交換を小池知事に要望したが、知事がどう対応するのか見ものだね。

告示15号見直し 現行基準と実態のかい離是正がポイント

A ところで、国土交通省の中央建築士審査会(中建審)で建築設計・工事監理等の業務報酬基準(告示15号)の見直しに向けた議論が始まった。
B 現行の基準は、耐震強度偽装事件を受けて旧建設省告示1206号を抜本的に見直す形で2009年1月に公布・施行された。旧告示が制定された1979年以来、初めての大改正だっただけに当時の事務方も相当苦労したようだ。それもあって国交省では基準を定期的に見直すことにしていた。今回は“定期メンテナンス”の初回とも言える。
A 議論のポイントは。
F 現行基準と業務実態のかい離の是正だ。言い換えれば業務実態をいかに的確に把握できるかにかかる。建築物の大規模化、複合化が進む中で、従来の類型化した用途区分ではくくれないような施設も散見される。発注方式の多様化によって基本設計と実施設計の業務内容や割合も変わってきている。質・量ともに大きく変化している業務の実態に即した適切な報酬基準を導き出すためには、どれだけ幅広く多種多様なサンプルを集められるか。アンケート方式による調査の内容ややり方も従前以上に工夫が求められるのではないか。
E 業務報酬基準はあくまで目安だが、設計や工事監理の価値を具体化できる重要な指標でもある。建設産業界は技術者や技能者の高齢化が顕在化しているが、建築士もまた同様の状況にある。改正作業を通して建築設計や建築士のあり方についての議論がより深まることを期待したい。
F 告示15号は新築設計が対象だ。改修設計に関する業務報酬基準は耐震改修以外はない。今回の見直し議論とは別だが、今後、ストック活用時代が本格化する中で改修設計のあり方についても議論が必要だろう。

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