【国土強靱化に貢献】冨田組が放置竹林対策の新事業展開 さまざまな形で広がる竹の活用法 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【国土強靱化に貢献】冨田組が放置竹林対策の新事業展開 さまざまな形で広がる竹の活用法

 愛知県田原市を拠点に置く冨田組は、新事業である竹林、雑木林の整備工事で国土強靱化に貢献している。同社は1950年に創業して以降、渥美半島や東三河地域などで土木、建築、とび・土工、水道、舗装、造園工事などを手掛ける総合建設業者だ。

冨田雅則社長


 冨田雅則社長は、新事業である竹林整備について、「以前、造成工事を手掛けた際に、荒れた竹林が及ぼす弊害に気がついた」と語る。
「竹は、タケノコとしてはたんぱく質や食物繊維などの栄養素を含む貴重な食料だ。また、生垣や竹細工などの材料としても、古くから親しまれている。京都・嵐山の竹林などは、その景観の美しさゆえに国内外の観光客から人気が高い」という。その上で、「近年は人口減少などの社会情勢の変化により、竹を扱う人が減少した。特に地方では『放置竹林』がまちの景観を損ね、安全性を脅かしている」と指摘する。

竹林伐採の風景


 「松や杉の根に比べて竹の根は浅いため、台風や集中豪雨などで地滑りが起きた際には、地域住民の生活に悪影響が出る懸念が高い」という。
 そこで、同社は放置竹林対策のため、2010年に竹の伐採、抜根ができる九州ナカミチ(福岡市)の「バンブーカッター」を購入した。竹林伐採時の作業効率化を実現し、竹林の整備工事を始めた。その後、格納式刃物付きのグラップルバケットで「掘る」「つかむ」「積み込む」「伐倒」などの作業ができる松本システムエンジニアリングの「フェラーバンチャザウルスロボ」、アタッチメント替えで竹の根を現地で破砕できるウエダ産業(大阪府茨木市)の「破砕丸」などを導入した。これにより、発注者のニーズや施工内容などに応じて、放置竹林の伐採から減容・減量化までの一連の作業を現地で行うシステムを構築した。

竹林伐採を開始


 現在は伐採機3台、破砕機5台の重機を保有している。破砕処理の作業内容は、竹幹は切り倒して移動式破砕機で破砕する。また、竹根は(1)スケルトンバケットで掘り起し、土砂を落とし処分場へ運搬する(2)スケルトンバケットで掘り起し、トロンメル(移動式ふるい機)で泥を落とし、処分場へ運搬(3)スケルトンバケットにより泥を落とし、現地で破砕丸により破砕する–などの方法が選択できる。

破砕の様子


 実績は初年(10年)の整備面積約5000㎡から年々増加している。国土交通省中部地方整備局が発注した「平成30年度豊川樹木伐採工事」では、協力業者として、延べ約6万㎡の竹林整備を手掛けるなど、いまではこの新事業が同社の実績の一翼を担うまでに成長した。
 今後は小型破砕機によるチップ・粉末製作で資源としての活用にも注力する。破砕機で作成した竹チップは豚舎や牛舎などで、堆肥や堆肥舎の敷料などとして地元の畜産業者などの間で活用の場が広がっている。

小型破砕機でチップを生産


 冨田社長は「この事業を始めてから、ことしで10年の節目を迎える。プライベートで電車を使い移動する際にも、放置竹林に視線が向くようになった。課題は全国的なものだと感じている」という。このため、国や地方自治体などに、さらなる対策の必要性を呼び掛けている。

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