【「働きがい改革」を推進】従業員の幸せ通じて顧客満足を目指す 楓工務店の取り組み | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【「働きがい改革」を推進】従業員の幸せ通じて顧客満足を目指す 楓工務店の取り組み

 担い手不足や働き方改革など建設業を取り巻く課題に対し、業界全体が待ったなしの状況となっている。大手ゼネコンやコンサルタント、設計事務所などで取り組みが活発化している中、地域建設業者でも独自の取り組みが進んでいる。奈良市を中心に住宅建築を手掛ける楓工務店(奈良市)は、働き方改革ではなく『働きがい改革』に取り組んでいる。

理念合宿でやりがい感じる環境整備


 同社では2014年4月入社から新卒採用を始めており、新卒後3年以内に3割が退職すると言われる中、これまで採用した46人のうち退職者はわずか3人のみ。継続して働いてもらうため、採用プロセスから力を入れている。

 採用時に企業側が心掛けることとして同社の田尻忠義社長は「良い面・悪い面をすべて伝えること」をポイントに挙げる。募集要項などの書類だけでは見えない情報を学生に伝えることにより「しんどい面も正直に伝え、その代わりに得られるものを教えてあげなければいけない」と考える。

 選考プロセスは5次選考まであるが、面接は1度も行わない。“お客さまに楓工務店をプレゼンする”などの課題を与え、その活動の中で実際に先輩社員らと直接関わるようにしている。
 思いやり・実行力・主体性の3つの観点から学生を選考しており、選考過程で「自分がどうなりたいのかをしっかり考え、自分で決めさせる」ことで同社に合う学生とのマッチングにつながっている。「就職活動を始めたばかりの学生は自分のキャリアについて真剣に考えた経験がこれまでにない。そのきっかけを気づかせてあげる必要がある」と考え、あくまでも決断を学生に委ねている。

 新卒社員の受け入れ先となる部署の先輩社員や上司も選考プロセスに参加する。実際に自分たちが学生と関わることで「一人の若者を受け入れる意味をしっかりと理解させる」と企業全体で採用に関わることの重要性を説く。

 内定後には先輩社員をメンターに付け、資格取得など部署によって違う課題を与える。成果次第で初任給に差を付けるほか、入社後1年目の目標を達成した社員には目標達成旅行、4月には全社員が理念合宿に参加するなど、やりがいを感じることができる環境を整えた。
 直属の先輩社員とは別に心のケアを担当する他部署の先輩社員をメンター・トレーナーに充て、サポート体制も充実させる。

 結婚や夫の仕事の都合により引っ越さなければならない女性社員にもテレワーク勤務を導入するなど働きやすい環境を整備した。実際に富山県に引っ越しながら勤務を続けている社員もいる。女性社員からの提案で社員の子どもや地域の待機児童向けの企業主導型保育園も19年6月に開園した。
 こうした取り組みもあり、社員満足度は94%、顧客満足度は98%となっており「従業員の幸せがあってこその顧客満足だ」と力を込める。

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