【都市の未来】自由通路開通で東西地域の分断解消 新宿駅グランドターミナル構想今後の展開 | 建設通信新聞Digital

4月18日 木曜日

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【都市の未来】自由通路開通で東西地域の分断解消 新宿駅グランドターミナル構想今後の展開

 JR新宿駅(東京都新宿区)の東西自由通路が7月19日、供用を開始する。通路の拡幅と改札口の移設により、駅東西の地域の分断を解消する狙いがある。新宿駅周辺では東西自由通路の開通を初弾として、大規模な基盤再整備が控えている。

東改札前イメージ


 「将来、新宿駅をグランドターミナルとして整備していく上で、今回の東西自由通路の開通はそのスタートラインに立つ事業」。鈴木昭利新宿副区長は2日の定例記者会見で、事業の意義を語った。

 同事業は、JR新宿駅構内の北通路を17mから25mに拡幅するとともに、改札を移設して延長100mの自由通路を整備する。ホーム階と改札階を結ぶエレベーターも新たに設置している。

東西自由通路 整備前(2012年)

供用開始時点(20年7月)


 総事業費は約122億円。新宿区が中心となって立ち上げた「新宿駅周辺地区都市再生協議会」が事業主体となって、JR東日本が工事を発注した。大成建設が2012年9月から工事を進めてきた。

 鈴木副区長は東西自由通路について「当初は都市計画に位置付けずに事業をスタートしたが、19年12月には都市計画に組み込む形で駅全体の再編計画を決定した」と説明。将来、線路上空にできる計画の東西デッキなども合わせて「歩きやすく使いやすい、皆さんに楽しんでいただける駅にしていきたい。鉄道事業者とも連携していく」と意気込む。

 東西自由通路の開通に合わせて、東京都とJR東日本が共同で東口駅前広場の歩行者空間の拡張整備も進めている。歩行者と車両の動線を分離するために駅前広場内の車両動線を変更し、歩行者空間を拡大する。

 ルミネエスト新宿前の広場には、東口の新たなランドマークとして、JR東日本とルミネ(渋谷区)が共同でにぎわい空間を創出する。現代美術家の松山智一氏が設計した「花を持った少年が、東口の広場で待ち合わせたお客様を出迎えている姿を表現している」(鈴木副区長)パブリックアートを設置する計画だ。にぎわい空間や歩行者拡張空間は7月中旬にも完成し、東口駅前広場全体は21年3月の整備完了を目指す。

東口駅前広場のにぎわい空間完成イメージ


◆基盤整備へ検討進む
 駅全体の再整備事業は今後も続く。19年12月に新宿区と東京都が決定・告示した「新宿駅直近地区」に関する都市計画は、18年3月に策定した「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」に基づくものとなっている。駅、駅前広場、駅ビルなどが一体化した“次世代のターミナル”として、新宿駅全体を再整備する計画だ。

 コンセプトとして「誰にとっても優しい空間がまちとつながり、さまざまな目的を持って訪れる人々の多様な活動にあふれ、交流、連携、挑戦が生まれる場所」を掲げている。

 交流軸の構築を目指して、線路上空に東西デッキを新設し、地下の東西自由通路と合わせて東西骨格軸を形成する。4号街路(地上・地下)、新宿通り、中央通り(駅街路8号)の道路空間再編など、東西骨格軸となる道路を歩行者優先の空間に再編していく取り組みも進める。

 連携空間の創出に向けては、東西駅ビルの建て替えに合わせて、駅の“顔”となる広場空間を整備する。JR線路上空の広場空間「新宿セントラルプラザ」や、デッキから地下までを結び人の動きを立体的に感じられる「新宿テラス」などが計画されている。駅から離れて立地している新宿中央公園や新宿御苑のまとまったみどりを駅でも感じられるよう、地上、デッキ、建物の中間層や屋上などに植栽を重層的に配置していく。

 同方針を踏まえた土地区画整理事業は、東京都が施行者となる。21年3月15日までの履行期限で「新宿駅直近地区土地区画整理事業事業手続き支援業務」をオオバが受託。20年度以降の事業計画決定に向け、整備効果の検証などを進めている。

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