【さらなる市場拡大へ】沖縄発ガラス発泡リサイクル資材「スーパーソル」 その魅力とは? | 建設通信新聞Digital

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【さらなる市場拡大へ】沖縄発ガラス発泡リサイクル資材「スーパーソル」 その魅力とは?

 リサイクル事業を手掛けるトリム(那覇市、坪井巖社長)が、色合いの異なる廃ガラス瓶を再資源化し製品化した「スーパーソル」。道路や擁壁などの公共土木工事の資材、造園、植栽などの土壌改良材、水質浄化材などとして、沖縄県内を中心に市場導入が進んできた。さらなる市場の拡大に向け、事業協同組合を立ち上げ、2019年7月には「ガラス発泡リサイクル資材」(Z 7313)としてJIS(日本産業規格)化。一定の品質が担保されたことで、JIS化後には建設コンサルタントやゼネコンなどからの引き合いが増えている。

ガラス発泡資材事業協同組合の関係者。左から2人目が坪井代表理事(トリム社長)。


 坪井社長は、容器包装リサイクル法によってガラス瓶のリサイクルが義務付けとなることを契機に、グループ会社が営む居酒屋で廃棄されるガラス瓶に着目し、リサイクル事業を立ち上げた。

 約20年前から研究開発を進め、製品化した。形状や色が異なる廃ガラス瓶を破砕機で8mm以下のカレット(ガラス粒)にし、カレットをさらに砕き、小麦粉のようなガラス粉体にして、混合撹拌(かくはん)装置で発泡添加剤と混ぜ、700~900度で焼成発泡させることでスーパーソルを製造する。

廃ガラス瓶をガラス発泡リサイクル資材にするリサイクルプラント配置図


 スーパーソルは無機系多孔質軽量発泡資材で、地球環境に影響が出ない土壌還元型資材でもある。無機鉱物性のため熱や薬品に強く、保水性や排水性にも優れる。また、製造工程で比重や吸水率の調整ができることから、軽量盛土材や擁壁の裏込め材、岸壁背面材といった土木工事資材、屋上緑化資材、防犯砂利など用途は多岐にわたる。

 11年ごろから沖縄県発注の公共工事で使用が始まったが、「公共工事で使ってもらうにはハードルが高く苦労した」(坪井社長)。その後、地道な提案活動が実り、沖縄県内工事での採用が増えるとともに、製品の可能性と将来性に魅力を感じた地域の企業が製造・販売に参画。全国各地の工事で製品の使用が広がり始めた。海外にも14年に進出、台湾で製造プラントが稼働した。16年5月には、トリムを含む10社でガラス発泡資材事業協同組合(坪井代表理事)を設立。安心・安全な製品を市場に供給する活動を展開した。

沈下抑制対策工路床改良の施工事例


 組合は、自主的な品質管理によって製品の品質を確保してきたが「製品の標準化を進めれば、品質がより安定化し、市場の拡大、新たな市場開拓につながる」(大柳総一郎組合専務理事)として、「JIS化にトライする」(坪井社長)ことを決めた。

 JIS化に向けては、中小企業の優れた技術・製品の標準化を進め、迅速な提案によって市場の開拓につなげる「新市場創造型標準化制度」を活用することにした。ガラス発泡リサイクル資材の標準化申請は、日本産業標準調査会が17年7月に承認。その2年後にJIS制定となった。

 製品は地盤材料や造園・緑化材料などに使われるため、用途別の密度や吸水率、硬さなどの品質基準と、それらの測定方法を規定した。JISを所管する経済産業省の黒田浩司産業技術環境局国際標準課長は、「製品の品質基準や試験方法をJISに定めることで、信頼性を確保し公正な取引を実現するとともに、公共調達の基準に採用されやすくなるという効果もある」と話す。坪井社長は「JIS化によって安定した品質を確保し、安全・安心な資材であることを発信できることに大きな意味がある」とし、JIS制定が製品の普及や公共工事などでの利用拡大につながると期待する。

 公共工事の納品実績は18年度が1万m3、19年度が1万3000m3。建設コンサルタントやゼネコンからの引き合いに加え、発注者からの問い合わせも増えつつあることから、20年度は3万m3の納品を目指す。

 製品供給能力も上がっている。JIS制定時の組合員は12社だったが、4月に1社が加入、7月にも1社増え14道県に製造プラントがあることになる。さらに、事業協同組合が「官公需適格組合」の認定も受けた。坪井社長は「今後も、全国展開を推進し、47都道府県に製造プラントを設け、マテリアルリサイクル事業を広げたい」と展望する。

補強土壁の施工事例

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