【BIM未来図・大和ハウス工業③】施工の完全BIM化が本格化 設計から円滑にデータ連携 | 建設通信新聞Digital

5月20日 月曜日

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【BIM未来図・大和ハウス工業③】施工の完全BIM化が本格化 設計から円滑にデータ連携

 2020年度から施工段階のBIM導入フェーズに入る大和ハウス工業は、22年度末までに導入率100%を目指している。新型コロナウイルスの影響で着工の動きが鈍いこともあり、現時点では稼働中のBIM導入現場は7件と、導入率で3%にとどまるものの、20年度末までには最低でも10%まで伸ばす計画を立てる。これは1事業所当たり1件を導入すればクリアできる数字だが、社内にBIM導入の機運が高まり、各事業所で2件程度まで導入が伸びれば、一気に20%まで引き上げられるとの期待も持つ。

2020年度は導入率10%を目指す


 現場では、意匠・構造モデルと連携した仮設図(総合仮設・足場図)の作成、構造モデルと連携した躯体図(基礎・杭伏図)の作成もスタートした。建設デジタル推進部ではオートデスクのBIMソフト『Revit』への移行を進める現場支援策として、外壁や鉄骨の下地、胴縁など効率的に現場を支援するアドインツールの作成も進め、現在はツール数が100を超えた。同部次長の宮内尊彰氏は「新たなプロセスに移行する際はどうしても軌道に乗るまで生産効率が落ちてしまう。現場の声を聞きながら支援ツールを増やすことで円滑にBIMの浸透を図っていきたい」と強調する。

 ゼネコン各社が苦戦している課題の1つに、設計から施工へのデータ連携の難しさがある。設計段階で作成したBIMデータを、施工BIMデータとしてスムーズに移行できず、結果として施工段階はBIMモデルを作り直す状況になってしまう。同社はBIMデータの一貫活用を前提に生産・施工プロセスの改革を進めており、「施工に使えるBIMデータをどう設計プロセスから進化させていくか」(宮内氏)をテーマに設計部門と施工部門の協議の場を設け、全体最適の枠組みを検証している。

 「しかしながら施工段階では現場ごとに施工の条件や環境が異なり、設計段階のように一気にBIM導入に突き進むのは難しい」と南川陽信上席執行役員は考えている。20年度は各事業所1件の導入を目標に突き進むが、中にはBIMの利点を理解し、前向きにチャレンジする事業所もみられる。「あるレベルを超えれば、施工段階でも一気にBIM化が進むはずだ。BIMの価値共有が重要になってくる」と力を込める。

 同社の建築事業は設計施工一括受注が全体の9割にも達する。同部の芳中勝清理事は「この9割の優位性を生かすには各部門がバケツリレーのようにデータをつなげていくのではなく、一元化されたデータを連携して活用できる枠組みが必要」と例える。重要なのは「各部門が一元管理されたデータを共有した上で、8割ほど前処理を整えた状態で次につなげること」と訴える。施工段階のBIM導入を下支えする生産設計部隊を整える準備も始めた。

 20年度下期からはオートデスクのクラウドサービス『BIM360』を全物件で導入する。同社は、完全BIM化を下支えする基盤のツールとして位置付けている。川上から川下まで一貫したBIMを実現するには一元化された統合データが必要であり、それを関係者がリアルタイムに共有できる枠組みが必要になる。「それが部門間連携にもつながる」と芳中氏は付け加える。

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