【大型台風のリスク評価にも活用可能】竹中工務店 高精度予測数値風洞「Kazamidori」開発 | 建設通信新聞Digital

5月12日 日曜日

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【大型台風のリスク評価にも活用可能】竹中工務店 高精度予測数値風洞「Kazamidori」開発

 竹中工務店は、風が建物に与える影響を数値シミュレーションで高精度に予測する数値風洞「Kazamidori」を開発した。風の強さや流れをコンピューター上で予測・可視化して風荷重や風速などを評価する技術で、従来はコストなどの問題で風洞実験の実施が難しかった中小規模のプロジェクトへの適用も可能だ。気象解析の結果と連携したことで、過去の台風の再現や今後増加が懸念されるスーパー台風を想定したリスク評価にも活用できる。

Kazamidoriによる19年台風19号上陸時の風の流れの再現結果


 同技術は、建物と風に関する諸問題に対応したツールで、風荷重の評価を始め風揺れによる居住性能、風による不安定振動の有無、建物周りの最大風速なども評価できる。

 また、気圧配置などの気象条件を活用した気象解析の結果と連携することで、過去の特定の台風が上陸した際の市街地内の気象条件も再現可能としており、今後増加が懸念されるスーパー台風を想定した被害リスクの評価にも活用できる。筑波大計算科学研究センターの日下博幸教授との共同研究により、対象地域の観測データと連携することで、風の流れの予測精度を高めることも可能としている。

 従来、建物の風荷重の高精度な評価手段には風洞実験が広く用いられているが、模型製作に費用と期間が必要なため、主に大規模プロジェクトでの適用に限られていた。同技術はコンピューター上で市街地を再現することで、風洞実験に必要な模型製作に要する費用や期間を大幅に削減できるため、中小プロジェクトや設計初期段階での適用が容易となり、幅広いプロジェクトでの活用が期待できる。

 さらに、風洞実験が苦手な複雑な形状の建物や細かな部材に作用する風の力でも詳細な計算結果を得ることができ、実際には見ることができない風の流れや建物表面の風圧をコンター図やベクトル図、流線図などのアニメーションで可視化することも可能だ。

 既に10件以上のプロジェクトに適用されており、今後は年間5件程度の適用を当面の目標としている。設計初期段階から活用することで強風に対する安心・安全と経済合理性が両立した建物の提供を目指すとともに、AI(人工知能)技術も活用してさらなる建物の強靱化を図り、強風災害の迅速な予測技術などの実現にも貢献していく予定だ。

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