【"生きた建築"学ぶ】老舗料亭上層階をリノベーション 学生15人がアイデアをプレゼン | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【”生きた建築”学ぶ】老舗料亭上層階をリノベーション 学生15人がアイデアをプレゼン

 日本工学院八王子専門学校(東京都八王子市)は、創業87年の老舗料亭「なか安」(同)と不動産事業を手掛ける住宅工営(同)と連携し、学生提案による「学生シェアハウス」として、料亭の上層階を対象にリノベーションする産学連携・共創プロジェクトを進めている。同校建築学科の授業の一環で、9月にリノベーション対象となる料亭なか安で最終発表会を行い、井上汐里さんの「Inner Terrace(照らす)House」が最優秀賞に輝いた。今後、住宅工営などが2021年3月入居予定のシェアハウス事業として具体化。学生たちは、設計、施工などの過程を見学・体験しながら提案が“生きた建築”となるプロセスを学んでいく。

学生15人がプレゼンテーションに臨んだ


 プロジェクトは「明日も楽しみで“たまんない”~学生シェアハウスdesign project@暁町~」として、店舗ビルのうち、現在使われていない4階を共用部、5、6階を居住部とする計画。同校テクノロジーカレッジ建築学科3年生(全56人)が2020年度前期「設計計画」授業として、「自分も住みたくなる人気のシェアハウス」をテーマに6月から現地調査、コンセプト、図面、CG、イラスト、建築模型の作成、ライフデッサン、予算の策定などの提案について、夏休みを返上して取り組んできた。

 9月10日の最終発表会は、冒頭、建築家・隈研吾氏の学生への激励メッセージ動画をサプライズで紹介。続いて、8月下旬に校内で実施した発表会で選ばれた学生15人が、建築模型の展示や最終プレゼンテーションに臨んだ。活発な質疑応答後、関係者による審査を経て、最優秀賞、優秀賞、特別賞を選定、表彰した。発表者以外の学生は、リモートで視聴参加した。

 最優秀賞の「Inner Terrace(照らす)House」は、運動や健康について学び、トレーナーなどを目指す学生などの入居を想定。インナーテラスを室内に取り入れ採光や風通しに配慮した設計や、学生が屋上でフィットネスを教えるといった、入居者と地域や「なか安」との交流を提案した点が高く評価された。

最優秀賞の建築模型


 冒頭のあいさつで、なか安の宮崎昌久代表取締役は「なか安は、祖母が創業し、私が3代目。百年、二百年続く企業を目指していたところ、今回のお話をいただき感謝している。皆さんは多大なる時間と労力を使ってきょうを迎えたと聞いている」とし、学生の発表に期待感を示した。元八王子市長の黒須隆一片柳学園理事・評議員は「八王子専門学校の学生には、八王子まつりのポスター制作など市のまちづくりに幅広く貢献していただき、市民も親しみを持っている。理事として誇りに思う。リアリティーのある提案に期待している」とあいさつした。

 また、審査後のあいさつで、住宅工営の齋藤祥文代表取締役は「ここまでこの課題に向き合っていただけるとは、思っていなかった。今回の経験を誇りに思い、素晴らしい学校、先生に恵まれて最高の環境にいることを自覚し、最大限生かして、将来の自分の人生を切り開く時間にしていただきたい」と学生にエールを送った。

地元に愛されている料亭「なか安」


 片柳学園・日本工学院八王子専門学校の山野大星理事・副校長は「今回は、当校が大きな柱としている『若きつくりびと』の養成、産学連携、地域連携の3つを兼ね備えた素晴らしい課題」とし、関係者に感謝するとともに「これからも学生を温かく見守っていただきたい」と結んだ。

 同校では、地域の問題発見・課題解決をテーマにした産学連携による「実践的な学び」を積極的に推進している。今回のプロジェクトは、実現可能性のある課題として、これまでにない貴重な実学の機会と捉え、全国有数の学園都市である八王子ならではの学校の域を超えた学生同士や地域の交流拠点として地域活性につながることも期待している。

最終発表会後の参加者による記念写真

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