【新旧建築物の魅力を発信】大阪「イケフェス」で「生きた建築」を体験 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【新旧建築物の魅力を発信】大阪「イケフェス」で「生きた建築」を体験

 大阪にある新旧建築物の魅力を発信するイベント「生きた建築ミュージアムフェスティバル(イケフェス)」が、ことしも27、28の2日間を中心に大阪市内各地で開かれた。

◆中央公会堂100年振り返る
 1918年の完成から100周年を迎える大阪市中央公会堂は「中央公会堂と中之島の100年展」が開かれた。時代の移り変わりによって役割を変え、さまざまな利用がされてきた公会堂の歩みと周辺の中之島界隈の変貌を紹介した。
 パネル展示では、中央公会堂が建てられた経緯や各部屋・設備・照明、結婚式など多様な利用の様子、江戸から明治、大正、昭和期における中之島界隈の風景、ステンドグラスや竣工当時の座席に隠された秘密などを解説。1912年に催した懸賞付き設計競技に応募された13点のデザイン画も掲示した。
 また日本建築設計学会主催の「みんなの建築ミニチュア展」も同時開催されたほか、28日にはイケフェスのクロージングシンポジウム「中央公会堂の100年を越えて」が開かれた。1999年から2002年かけて実施された保存改修の記録映像が上映されたほか、橋爪紳也大阪府立大特別教授、嘉名光市大阪市大大学院教授、倉方俊輔同准教授、高岡伸一近畿大准教授によるトークショーも催された。
◆船場・堺筋まち歩き
 日本建築協会(設楽貞樹会長)は27日、生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪の一環として、「船場・堺筋を歩く」を開いた。船場・堺筋界わいの近代建築を、山形政昭大阪芸大教授と橋寺知子関大准教授の解説を交えながら見学。約30人の建築ファンが参加した。
 冒頭、設楽会長は「イケフェスは5年目を迎え、軌道に乗ってきた。本事業はそのイケフェスとのタイアップ企画だが、100人を超える応募があり、関心の高さを感じている。学識経験者がツアーコンダクターとなり、建物のみならず街や通りについて解説するので、ぜひ今後の話のタネにでもしていただきたい」とあいさつした。
 その後、2班に分かれて芝川ビルやオペラ・ドメーヌ高麗橋、日本基督教団浪花教会、綿業会館、大阪取引所、大阪市中央公会堂などを見学。旧小西家住宅(小西儀助商店)では建物内部も見て回った。
 山形教授は「船場や堺筋は近代建築が多く残っている貴重なエリア。見学を機に堺筋が大阪のメインストリートで活況を呈していた100年前に思いを馳せてみてほしい」と話した。
◆手話付きガイドツアー
 府立中之島図書館で11月26日まで開催中の「大林芳五郎展」(協力・大林組)。大林組創業者にスポットを当てた同展会場で27日、ガイドツアーがあった。大林組大阪本店総務部社史課の荒田智康さんがガイド役を務めた。荒田さんが聴覚障害者であることもあって、手話通訳つきのガイドが行われた。
 荒田さんは「血のにじむような努力がたたってか早く亡くなってしまったが、あと10年、20年長く生きていたらいまの日本は違っていたかもしれない」と近代大阪の礎を築いた大林芳五郎の功績をたたえた。
◆「心と技」を伝える
 竹中工務店は大阪本店(御堂ビル)を一般公開した。「生きた建築・伝える心と技」をテーマに建物内の見どころを市民向けに解説するガイドツアーを始め、模型展示やかんな削りなどの実演体験コーナーなども設けられ、大勢の人でにぎわった。
◆清林文庫を一般公開
 東畑建築事務所は、稀覯本コレクション「清林文庫」を一般公開した。同文庫は創業者・東畑謙三(1902―1998)が生前買い集めた1万5000冊を超える古書を中心としたコレクション。建築を始め美術工芸、海外、彫刻、古地図など分野は多岐にわたる。2回目となることしは「グーテンベルクの印刷革命」をテーマに、シェーデル「ニュルンベルク年代記」などを特別展示した。また市民とともに取り組んだまちづくり事業などの紹介コーナーも設けられた。
◆手描きパース一堂に
 日建設計大阪オフィスは「drawn to architecture」と題し、手描き建築パースを中心に展示した。過去の建築作品のパースのほか、事務所の手描きパース専門チーム「イラストレーションスタジオ」が手がけた最新の事例なども集め、紹介した。
◆スペシャル寄席も
 安井建築設計事務所は26、27日の両日、オープンハウスを開催した。「安井武雄の住宅の世界」と題し創業者・安井武雄の住宅建築にスポットを当てた作品展を開いた。27日午後には、地域貢献の一環で「イケフェススペシャル寄席」として落語家・桂雀太さんによる落語会が行われるなど、来場者の関心を集めた。

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